レッドブル・ホンダを救った「恵みの雨」と「正しい決断」。濡れた路面でピカイチの速さを見せた
雨に笑い、雨に泣いた。
ランド・ノリス(マクラーレン)は最後の5分、路面が急速に乾いていった予選で誰よりも鋭い走りを見せ、自身初のポールポジションを獲得した。
決勝でもスタートでひとつ落としたポジションを13周目に取り戻し、その後もレースをリードし続けた。後方からは王者ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)が猛烈な追い上げでDRS(※)圏内まで迫ってきたが、レースは残り8周。初優勝に向けて、最後の大勝負が始まる......。
※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。
突然降り出した雨のなかを快走するフェルスタッペンこの記事に関連する写真を見る そんな矢先の46周目、突然、雨が降り出した。
勝利を追いかけるふたりは、ドライタイヤのままコース上にとどまろうと懸命の走りを見せる。だが、ハミルトンが49周目にピットに飛び込んでインターミディエイトタイヤに交換する一方、ノリスはチームの制止を振り切るようにハードタイヤで走り続け、目の前に見える勝利を掴み獲ろうとする。
しかし、無情にも雨脚は急速に強まり、ノリスはリードを吐き出して後退を余儀なくされてしまった。
雨の予選でタイヤ交換のタイミングを逸して4位に沈み、さらには決勝のスタートで7位まで後退しながらも、前半はタイヤ温存・燃費セーブに集中。前のダニエル・リカルド(マクラーレン)がいなくなった瞬間から猛プッシュに切り替え、1秒も速いペースでノリスを追いかけたハミルトンが、最後の雨に完璧なタイヤ選択をして自身100勝目を掴み獲った。
「昨日の夜、自分のドライビングはハッピーじゃなかった。リプレイ映像を何度も、何度も見て、ミスは小さなものではあったけど、そういうものがたくさんあって、決して最高とは言えなかった。だからこそ今日は、絶対に最高の仕事をやり抜くんだという強い決意を持って朝を迎えたんだ」
ここのところのハミルトンは、小さなミスが続いていた。だが、7度目の戴冠を決めた昨年のトルコGPと同じように、どんな苦境でもあきらめず、攻めと守りのメリハリが利いた王者らしい走りが蘇った。
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