麗しき女性レーシングドライバー猪爪杏奈の挑戦。いばらの道を楽しむ (3ページ目)

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto) 磯貝琢哉●動画 video by Isogai Takuya

 現在、チームとの契約やスポンサー活動などは基本的にひとりでやっています。ドライバーのシートは奪い合いですし、スポンサー集めは本当に大変です。見つかる時はポンポンと順調に進むのですが、100件あたって全部ダメという時もあります。

 それでも一生懸命やっていると、周りの方が自然と手を差し伸べてくれて、壁を乗り越えることができる瞬間があります。そういう時は、くすぶっていた苦労がすべて吹き飛び、「生きていて良かったな」と心から思えます。

 レースの道に進んで良かったと思っています。周りにサポートや応援してくださる方もいますし、基本的には自分の判断や行動がキャリアにつながっていきます。今、毎日が充実していますし、やりがいを感じます。

 もちろん、そう簡単にはいかないこともあります。私は小さい時からバレーボールで身体を鍛えていたので、体力には自信がありました。しかし去年9月、スペインで開催されたWシリーズのオーディションを受けて、その自信を木っ端微塵に打ち砕かれました。

 シリーズは2019年にスタートした女性ドライバー限定のフォーミュラカーレースで、マシンはF3を使用しています。そのオーディションでは、自分よりも華奢な体型の10代後半ぐらいの女の子が余裕でマシンをドライブしているのに、私はもう何ひとつ対抗できないまま終わってしまいました。

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