中野真矢が加藤大治郎と繰り広げた熱戦。20年前、激動のロードレース界 (4ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 自分に足りない部分はあるだろうし、開発面にも課題があるかもしれない。日々そればっかり考えていて、その積み重ねであの日のレースを迎えたんです。それでも負けたものだから、自分の中の悔しさがあんな形で爆発したんですね。よく覚えていますよ。絶対にやっちゃいけないことだけど、ピットの中にあったものを蹴っ飛ばして。で、この話には続きがあって、様子をのぞきに来たドクターコスタ(MotoGPに帯同する医師団長)が『よしよし』ってなだめてくれたんです(笑)」

 このレース結果により、中野はチャンピオンシップポイントでジャックの2点差まで追い上げた。2000年250ccクラスのタイトル争いは、シーズン最終戦を残して中野とジャックのチームメイト対決という形になった。

 最終戦の舞台は、オーストラリア・フィリップアイランドサーキット。全会場の中でも屈指のハイスピードコースで、特に高低差の激しい後半セクションから高速最終コーナーまでの区間では、過去にも数々の名勝負が繰り広げられてきた。このコースで、中野とジャックのどちらか先にチェッカーフラッグを受けた方がチャンピオンになる。

 すでに記したとおり、日本人選手の中野とフランス人選手のジャックが所属するチームは、フランス人監督のポンシャラルが率いるフランスを母体とするチームだ。チャンピオンがかかった争いでは、チーム内部に多少の自国びいきの雰囲気が発生したとしても決して不思議ではない。だが、ポンシャラルはふたりをまったく平等に扱った。チームスタッフに対しても、レースに向けた準備などで絶対に差をつけないことを徹底させた。

 中野とジャックはチームからのそんな期待に、自分たちの走りで応えた。

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