次の日本人F1ドライバー誕生はいつ?夢をあきらめない松下信治の挑戦 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

 前2台のバトルを冷静に観察し、「ここで抜かないとチャンスはない」という瞬間にはアグレッシブにブレーキングを遅らせてコーナーに飛び込み、サイドバイサイドのバトルで抜き切った。レースでは強い......それを証明したドライビングだった。

 では、開幕からこの走りができずに低迷したのはなぜか? 問題は、予選と松下の経験にあった。

「予選の走らせ方は......今年タイヤが18インチになって8kgも重たくなったことで、F2マシンの挙動が大きく変わったんです。ブレーキングは止まらないし、コーナーで速度が落ちる速さも全然違って、トラックみたい。

 ブレーキングは得意だけど、そこで攻めすぎると速く走れない。FIA F3のマシンみたいにブレーキングで攻めすぎないで、しっかりとコーナーの出口を考えたドライビングをしなければならなくて。それがF3からステップアップしてきたルーキーたちが自然と馴染んでいる理由みたいです」

 松下と同じようにF2での経験豊富なドライバーたちの多くが、今年の18インチタイヤの扱いに苦労している。頭ではわかっていても、予選でフルプッシュすれば攻めすぎてしまう。これまでの13インチタイヤを履いたF2マシンの感触が身に染みついているからこその苦戦だ。

 松下のチームメイトであるフェリペ・ドゥルゴビッチは、今年FIA F3からステップアップしてきた。松下よりもスムーズに今季のF2マシンに馴染み、レース2で2勝、シルバーストンではポールポジションも獲得した。

「チームメイトのほうが速いから、そのドライビングスタイルに合わせようとするんだけど、そうすると自分の本来のスタイルを崩すことになる。自信があるはずのブレーキングも自信をなくし、問題のコーナーもイマイチ対応できてなくて、どっちつかずの状態になってしまった。自分の中でイメージする速いドライビングと、このクルマでの速いドライビングがまったく違う状態なんです」

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