今季初勝利。レッドブル・ホンダとフェルスタッペンが覆したF1の常識 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

 追い抜き、そしてディフェンスの際にも、パワーユニットを「モード6」から「モード7」「モード8」と頻繁に切り替えてアグレッシブにパワーを絞り出していた。しかし、昨年のオーストリアGPの時のように"前借り"をして1レース分以上のモードを使ったわけではないという。

 ホンダは今回のレースで今季2基目のパワーユニットを投入した。決勝で使用できるモードの自由度が高くなり、それだけ決勝に余裕が生まれているのだ。ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語る。

「新品を入れたからがんばっちゃいました、という形ではなく、きちんとマネジメントしながら使っていくつもりです。ただし(パッケージとして後れを取っている)今の状況を考えて、必要な時には必要な攻める使い方をすることは、チームやドライバーとも合意してやっています」

 フィニッシュ後にフェルスタッペンが無線で送った「ホンダの仕事もすべてがパーフェクトだったよ」というメッセージは、それを表わしたものだった。70周年記念GPの勝利は、チームとパワーユニットとドライバーがすべて仕事をやり切ったからこそ掴み獲ることができたものだ。

「(メルセデスAMGとの差は)絶対値として難しいものの、総合的に見れば王者に挑んでいけることが見えた。箸にも棒にもかからない状況で、この過密スケジュールを戦って閉塞感が出て来かねないなか、モチベーションに大きく影響する結果です」(ホンダ・田辺テクニカルディレクター)

 予選では1.022秒もの差をつけられたレッドブル・ホンダだが、決勝ではメルセデスAMGを上回る速さを見せた。これがタイヤのためか、風が若干弱くなったためか、それとも予選のパフォーマンスが劣っているためなのか、まだわからないという。

 しかし、開幕4戦では届かなかったメルセデスAMGの牙城に手が届いたことは揺るぎない事実だ。その理由を正しく理解することが、今後のレッドブル・ホンダの躍進のカギを握っていると言える。

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