みんなに愛されたニッキー・ヘイデンが遺したレース愛あふれる言葉 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 決勝レース序盤の4周目にペドロサが自滅して転倒し、アウト側にいたヘイデンを巻き込んでともにリタイア。両選手はノーポイントレースとなってしまったのだ。一方、ロッシは2位に入って20ポイントを加算したことで、ヘイデンを8ポイント逆転してランキング首位に立った。

 最終戦のバレンシアGPは、チャンピオンを争うロッシとヘイデンの攻守が逆転した格好で迎えた。

 ロッシはポールポジションを獲得。一方、ヘイデンは2列目中央の5番グリッドになった。何度もタイトル争いを経験してきたディフェンディングチャンピオンが先頭グリッドで、その牙城(がじょう)に初めて挑むライダーは斜め後方からのスタート。この状況は、いくたびもタイトルを守り抜いてきたロッシに有利なようにみえた。

 しかし、そのロッシはこの決勝でスタートに失敗し、オープニングラップでは7番手まで下がった。そこから猛追を狙ったが、5周目の2コーナーでフロントを切れ込ませて転倒。この時、ヘイデンは2番手を走行していた。ロッシはバイクを引き起こしてレースに復帰したが、すでにヘイデンは手の届かない距離にいた。その後ヘイデンは堅実に表彰圏内の走行を続けて3位でゴール。シーズン終盤戦で何度も続いたどんでん返しを乗り切って、チャンピオンを獲得した。

 ホンダにとっては2003年以来3年ぶりのタイトルだが、ロッシ以外のホンダライダーが王座を獲得したのは1999年のアレックス・クリビーレ以来7年ぶり、という悲願の王座奪還劇だった。

「チャンピオンを獲得するためには、ずる賢さや狡猾(こうかつ)さも必要。ニッキーの場合、タイトルを狙うにはあまりに好人物過ぎる」

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