チーム・ルマン、悲願のスーパーGT制覇を亡きエンジニアに捧げる (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 開幕前、脇阪監督はチームに対し、新たな要求を宣言する。

「自分のためにやるのではなく、みんなのために働いてほしい」

 たとえば、ミスの許されないタイヤ交換を前に緊張しているメカニックがいたら、他のメンバーがフォローする。ガレージ内の設備や道具も、自分のためだけでなく、他のメンバーも使いやすいようにする。そのような気配りを、チームスタッフ全員に徹底させた。

 他人のことを第一に考えて行動する。そうすれば、最終的に自分に対してそれが"成果"として返ってくる――。

 脇阪監督の考えがレース結果に結びつくようになったのは、第3戦・鈴鹿からだ。今季初表彰台を獲得すると、第4戦・タイと第5戦・富士では2連勝。行動が成果として返ってきたことで、スタッフ全員に自信が芽生え始めた。

 そして最終戦・もてぎでは、ドライバーがそのメカニックのがんばりに応えた。

 第1スティントではタイヤのウォームアップがうまくいかずに順位を落とすも、大嶋が必死に挽回して3番手で山下にバトンタッチ。だが、ランキング2位から逆転王座を狙うナンバー37のKeePer TOM'S LC500(平川亮/ニック・キャシディ)がトップに浮上したため、山下は前を走るナンバー36のau TOM'S LC500(中嶋一貴/関口雄飛)を抜かなければ年間王者に手が届かない状況に追い込まれた。

 その瞬間、山下のスイッチが入った。見違えるようなアグレッシブな走りを披露し、38周目にはわずかなスペースに飛び込んで36号車をオーバーテイク。相手も抜き返しを狙ってきたが、山下は一歩も引かない姿勢でポジションを守り抜いた。

 6号車は2位をキープし続け、そのままチェッカードフラッグ。結果、ランキング2位の平川亮/ニック・キャシディ組を2ポイント差で上回り、チームに17年ぶりとなる栄冠をもたらした。

「スーパーGTに参戦して11年目のシーズンで、やっとチャンピオンを獲ることができました。結果を残せないシーズンもありましたが、みんなが僕を信じてくれて、ずっとチーム・ルマンのエースとして走らせてくれたことに感謝しています。

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