外国人記者が今季F1のトップ争いを分析。「現在の最強はフェラーリ」 (2ページ目)

  • サム・コリンズ●取材・文 text by Sam Collins
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 シンガポールGPを終えて、ルイス・ハミルトンはそんなふうにフェラーリを評した。

「今の彼らは、どんなコンディションでも速さを発揮している。だから、彼らに勝つのはかなり難しいだろうね。なんといっても、直線が抜群に速い。今の僕たちのストレートとは、とても比べものにならないよ」

 ハミルトンの指摘は正しい。実際、開幕前のテストでは「今季最強のマシン」と目されていた2019年のフェラーリSF90は、これまでも何度かメルセデスと互角の性能を発揮していた。だが、さまざまな理由で本来のポテンシャルを発揮できなかったのだ。

 その中には、マシンの信頼性不足やレース戦略上の失敗、ドライバーのミスなど、フェラーリの「自滅」と言えるものも少なくなかった。シーズン前半戦を振り返ると、バーレーン(第2戦バーレーンGP)では、シャルル・ルクレールにエンジントラブルが生じて掴みかけた勝利を逃してしまった。モナコ(第6戦モナコGP)では、予選のひどい戦略ミスのために決勝でルクレールの力を発揮するチャンスが台無しとなり、その決勝レースでは戦略を見誤って、セバスチャン・ベッテルが勝利する可能性をみすみす逃している。

 パワーユニットに関して言えば、フェラーリは開幕当初からライバルをリードしていたと考えていいだろう。彼らのパワーユニットはすでに2018年シーズン終盤の時点で大きなステップアップを果たしており、今もその性能は全グリッド中でベストと言っていい状態にある。

 一方、シャシーと空力デザインに関しては、2017年に新しい方向性へ舵を取り、今もその延長線上にあるが、今季の空力レギュレーションへの対応を最適なところへ落とし込むまでには若干の時間を要してしまい、これが前半戦の苦戦につながったと考えている。

 だが、重要なポイントは、ハミルトンが指摘したように、シーズン後半に入り、フェラーリがそれをうまく機能させるようになった、ということだ。

 一方のメルセデスは、ホイールベースが長く、昔ながらのサイドポッドを備えた、いわば「古き良き」クルマの外観を保っている。フェラーリの方向性には追従せず、彼らがキープコンセプトの姿勢を取っているのは、たとえマシンポテンシャルで少々劣ろうとも信頼性と実績が重要、と考えているからなのだろう。

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