「レプソル・ホンダから離脱?」ロレンソとドゥカティの危険な火遊び (4ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 レプソル・ホンダ・チームのボス、アルベルト・プーチは、こっそり去ろうとするライダーの前に立ちふさがって大きな影を投げかけた。

「重要なのはただひとつ。対面で話しているときにライダーが心中を正直に明かしてくれる、ということです」

 プーチがスペインの『DAZN』にそう話したのは、レースウィークの金曜だ。「彼からそれに類した話を何も聞いていないので、私としてはすべて順調なのだと思うよりほかないですね」。

 次戦イギリスGPのシルバーストンで復帰を果たした際に、果たしてロレンソはHRCのマネジャーや技術者たちからどんな歓待を受けるのだろう。ホンダは、RC213Vをロレンソに乗りやすいマシンにするため、あらゆる手を尽くしてきた。6月にはロレンソが日本へ飛び、タンクやシートポジションの調整を行なった。なかなか結果を出せないでいる状態でも、HRCはずっと彼を支えてきたのだ。

 ロレンソはこのバイクで、いまだにトップテンフィニッシュを果たせていない。マルケスが指摘したように、チャンピオン争いからはとうに脱落している。そして、ホンダがその見返りに受け取ったものはといえば、そこから去ろうとする行為だったのだから、いわばいきなり横っ面に平手打ちを食らったようなものだ。

 どうもロレンソは、本来そうであるべきほどには集中してホンダのマシンに取り組んでこなかったのではないか、という印象がある。とはいえ、そこには情状酌量の余地もある。十分なテスト期間を持てないままマシンに順応することがいかに難しいか、ロッシが以下のように話している。

「今年最初のテスト前に舟状骨を骨折したことが、かなり悪影響を及ぼしたんだろう。プレシーズンテストの6日間は、レースのプレッシャーがない状態で走れる貴重な時間でもあるんだ。セパンテストの3日間を走れずにレースウィークに入ると、いきなり全力で攻めなければならないわけだから、これはかなり厳しいよ」

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