ホンダとトロロッソの清く情熱的な関係。クビアトの表彰台に思わず涙 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 何としてでもトロロッソとともに表彰台を勝ち獲りたかったホンダは、オーストリアGPのフェルスタッペンのようにアグレッシブモードでパワーを捻り出し、クビアトを後押しした。

「オーストリアGPの時とは違う要素ですけど、残り10周くらいで使い始めて、フェラーリが近づいて来てからの残り3、4周はそれよりもさらにアグレッシブなモードを使いました。ワンツーフィニッシュは狙いたかったので、ドライバーも含めてみんながんばったのですが、フェラーリがあまりに速くて惜しいところで逃してしまいました。

 でも、レーシングポイントに抜かれる気はしていませんでした。もしミスなどで抜かれても、抜き返せるだけの速さはあると自信は持っていました」

 表彰台に駆けつけたトロロッソのスタッフたちは歓喜し、本橋エンジニアもつい目頭が熱くなった。

「トロロッソとやってきて、『本当にやっとこの瞬間が来た』という思いはあったし、我々もF1に復帰してからなかなか思いどおりにいかなくて苦労してきたので。難しいコンディションのなか、頻繁に車体やパワーユニットのセッティングを変える忙しいレースでしたけど、表彰台に立てて今までの苦労と今日の苦労が報われたなと。ホンダのマークがふたつ、表彰台に乗っているというのも感慨深かった」

 2017年の開幕を前に、マクラーレンとの関係が絶望的に冷え込んでいたホンダは、交わしていたザウバーとの供給契約が白紙となった。マクラーレンからも契約更新に向けて受け容れがたい条件を提示され、7月には翌年以降の供給先を失ってF1撤退の危機に直面した状態にあった。同時期にトロロッソから受けたオファーにも、経営上の都合からすぐには応じられず、8月の時点では一度断わりを入れたほどだった。

 それでもトロロッソは、ホンダの問題解決を待ち続けてくれた。そのおかげで、マクラーレンとの交渉が物別れに終わった後、9月という極めて遅い段階にもかかわらず、トロロッソという受け皿があってホンダはF1に残ることができた。

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