MotoGP元王者が長期低迷。ロレンソがホンダに順応する日は来るのか (2ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 今回の決勝レースでロレンソが犯した大失敗は、しかし、理解できないことではない。トップグループ走行中の2周目10コーナー進入でブレーキングに破綻をきたしてしまったため、結果的にレースはマルケスに利することになったが、その時の展開を振り返ったロッシは、よくあることだと述べた。「レースだからね」。そう言って肩をすくめた。「そういうこともあるよ」。

 その寸前にマルケスはドヴィツィオーゾを抜いて先頭に立っており、ロッシは転倒したロレンソの後方で、回避のためにマシンを引き起こしていた。当のロレンソは、このコーナー進入でビニャーレスをオーバーテイクして3番手に浮上したところで、ブレーキングが深すぎて転倒したため、すでに旋回動作に入っていたドヴィツィオーゾを巻き添えにしてしまった。

 ドヴィツィオーゾはロレンソの謝罪を受けいれている。レーシングインシデントだとはいえ、この出来事のおかげでチャンピオン争いには大きな影を落とすことになってしまった格好だ。

 250cc時代のロレンソは熱くなりすぎるあまり、危ない走りをする選手だったが、その反省から、この11年間の最高峰クラスでの活動を通じて、安全を担保した戦いの重要性をもっとも声高に訴える選手の代表格になった。日曜に見せた性急なミスは、ケンカ上等のバトルからもっとも遠いところにいる選手の例外的な失敗だったのだ。

 だが、ビニャーレスはロレンソが仕掛けたタイミングについて、このように指摘した。「ヤマハは直線が遅いんだから、そこで抜けばいいじゃないか。あとコーナー4個待つだけでよかったんだ」。

 ブレーキングからコーナー進入は、ロレンソがRC213Vに乗り換えてからもっとも苦手としてきた区間だけに、先頭グループにつけている時になぜあえてそこで仕掛けるのか、という疑問を持つのも当然だろう。土曜の走行後に「もうちょっとアグレッシブに攻める乗り方をしたい」と語っていたことを考え合わせれば、これは妙に気になる部分ではある。

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る