MotoGP元王者が長期低迷。ロレンソがホンダに順応する日は来るのか (3ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 だが、ロレンソの名誉のために言っておけば、彼は自分のミスを非常に率直に認めている。「おそらく、マーベリックを抜こうとしたタイミングも、場所もよくなかった」と述べて、「どれだけ謝っても謝りたりないくらいだ」と明かした。さらに、久しぶりにトップグループで争ったために感覚が鈍っていた、とさえ述べた。「かなり興奮していたんだ。乗れている感覚があったし、もっと行けそうな気もしていた」。

 今回の転倒は、昨年のアルゼンチンやヘレスにも匹敵するような、大きな出来事だったといっていいだろう。現在のロレンソが抱えている問題は明白だ。2018年のシーズン後半は負傷に悩まされ、年が明けた2月には、自ら言うところの「トレーニング中の軽率なミス」で左手舟状骨(しゅうじょうこつ)を骨折してしまった。つまり、レプソル・ホンダ・チームに加入して8カ月が経過した現在も、まだ完璧な体調には戻っていないのだ。

 さらに、バイクの要素もある。2019年型のRC213Vは、ここまでの7戦で4勝を飾っている。だが、カル・クラッチロー(LCRホンダ・カストロール)がこのマシンで苦戦を強いられていることからもわかるとおり、上記のリザルトはマシンの水準の高さというよりもむしろ、マルケスの天才がもたらした偉業、と言ったほうが適切だろう。

 もちろんエンジン性能は、トップスピードでも扱いやすさという面でも向上している。だがここ数年、ホンダ最大の武器だったフロントまわりで、クラッチローは苦労を強いられている。つまりは、バランスがまだ最適なところへ至っていないのだろう。

 ロレンソがドゥカティで過ごした2年からわかるのは、バイクのバランスやシートポジションが適切でないとパフォーマンスに悪影響を与える、ということだ。今年のヘレス(第4戦・スペインGP)で、ロレンソはこんなことを話していた。「フロントに荷重がかかりすぎて、腕がかなりつらいんだ」と。

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