トップ走行割合、実に70%。マルケスの神がかった速さにライバル脱帽 (3ページ目)

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison  西村章●翻訳 translation by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

「ライバルたちに向けて、ちょっと違った戦略を立てなきゃならないこともあるんだ」とマルケスは明かした。「そうじゃないと、手のうちを読まれてしまうからね。あるレースでは最初から果敢な走りで、次のレースではタイヤを温存するライディングをしていると、攻めているのか、無理しているのか、相手には判断できなくなるよね」

 このような策略は、なにも決勝レースに限ったことではない。

 ヘレス(第4戦・スペインGP)のフリープラクティス(FP)1回目では、大半の選手たちがミディアムコンパウンドかソフトコンパウンドのリアタイヤに合わせこむセットアップを模索していたが、その一方でマルケスは、全セッションをハードタイヤで走り続けた。そして午後になると、FP2の大半で、今度はリア用にソフトを装着して走っていたのだ。

 理屈に合わない見当違いの方向性にも見えるけれども、それでもマルケスは速かった。そうすることにより、どんなタイヤを履いても日曜の決勝は抜きん出て速い、ということを見せつけたわけだ。

 だが、マルケスは心理的なゆさぶり戦術のみで勝利を手にしたわけではない。

 日曜の決勝レースで、ホンダは最高峰クラス300勝を達成した。マルケスが挙げた勝ち星は、そのうちの47。これはチームメイトのホルヘ・ロレンソと同じ勝利数で、史上4位だが、この数字こそ彼の適応能力の高さをよく示している。ハードブレーキングでシビアにならないことを狙って作り込まれたホンダの2019年仕様には、ライダー側のアプローチを変えていくことが必要なのだから。

 去年以上にパンチの効いたパワフルなエンジンのバイクで、「去年とは違う方法でラップタイムを出すようにしているんだ」とマルケスは話す。だからこそ、「違うタイヤを使って乗り方を変えている」のだとか。

 今回のウィークでは、金曜日にまたしてもスーパーセーブで転倒を回避したものの、レースでのマルケスは今までと違って、ブレーキングでイチかバチかの勝負に出るような走りをしなくなっている。彼の走りを目の前で見ていたミラーは、その点を見逃していない。

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