2019.05.25

トップ走行割合、実に70%。
マルケスの神がかった速さにライバル脱帽

  • ニール・モリソン●取材・文 text by Neil Morrison  西村章●翻訳 translation by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 スポーツの世界では、最後の最後はもう神の力に頼るしかない、と考える人がいるものだ。マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)のライバルたちが日曜の午後に天を仰いで神の力添えを祈らざるをえない、という事態に陥ったのは、なにも今回が初めてではない。この7週間では3度目のことなのだが、やはり今回も、天は何も応えてはくれなかった。

第5戦・フランスGPでも圧倒的な強さでレースを制したマルク・マルケス 王者に最後までなんとか食らいついていたのは、ジャック・ミラー(プラマック・レーシング)だ。8周目以降は両者の距離が一方的に開いてゆき、ミラーはすがりついた藁(わら)を掴んだまま取り残される格好になった。

「何度か8コーナーでマルクがワイド気味にはらむのが見えたときは、何か起こってくれと祈っていたよ」とミラーは振り返った。「それ以外に彼を捕まえることなんて、できそうもなかったからね」

 力及ばず終わったのは、なにもミラーひとりではない。アンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)はレース後のプレスカンファレンスで、「(マルケスに対抗するためには)何か見つけなければいけない」と憮然とした表情で話した。

 この言葉もまた、マルケスがどんどん不可蝕領域へ遠ざかっていることをよく示している。成す術(すべ)もないままレースを終えたドヴィツィオーゾは、「自分たちが改善していければ、まだ戦うチャンスはある」とも述べた。「そのチャンスがなければ、あとはミスを祈るのみだよ」

 マルケスが余裕の走りで完勝を収めるのは、別に今に始まったことじゃないだろうと、あなたは思うかもしれない。たしかに、ここまでのレースで最大125ポイントのうち、95ポイントを獲得している状態は、昨年の第5戦終了時とまったく同じだ。

 だが、今年のマルケスのアプローチは、今までとは少し異なっている。

 今回のレースを振り返ると、レース開始からチェッカーフラッグまでに唯一、勝負を仕掛けることができたのは、ミラーのみだ。3コーナーでイチかバチかの勝負に出たミラーは、かろうじて5周目と6周目にトップに立ったものの、それを除けばマルケスはアルゼンチン(第2戦)のスタートシグナルが消灯してからル・マン(第5戦・フランスGP)のチェッカーフラッグを受けるまで、ずっと先頭を走り続けているのだ。