インディ500の予選スタート。佐藤琢磨が優勝候補に挙げられる理由

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano
  • 松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 今年のNTTインディカーシリーズは大混戦だ。チーム・ペンスキー、チップ・ガナッシ・レーシング、アンドレッティ・オートスポートが3強として君臨しているものの、昨年から空力パッケージがワンメイクに戻り、どのチームも大きなアドバンテージを手に入れることができずにおり、中堅、新興チームにも、実力を伸ばすところがでてきた。

 第5戦はインディカーグランプリ。インディアナポリスのオーバルコースの一部も使った、ほぼフラットなロードコースが舞台だ。金曜、土曜の2デイイベントとして開催されたが、両日とも低温コンディションで、レースの終盤には雨も降った。

インディカーグランプリでは14位だった佐藤琢磨インディカーグランプリでは14位だった佐藤琢磨 予選ではスウェーデン出身のルーキー、フェリックス・ローゼンクビスト(チップ・ガナッシ・レーシング)がキャリア初のポールポジションを獲得し、先輩チームメイトのスコット・ディクソンが2位。彼らはマシン・セッティングで優位を手にしたようだ。

 だが、85周のレースは最後の20周が雨になり、ウェットコンディションでのスピードと、どんどんと乾いていく路面でのパフォーマンスが勝敗を分けた。

 雨が降り出した直後、タイミングよく出されたフルコースコーションで、躊躇なくレインタイヤを装着したディクソンは、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)からトップの座を取り戻した。

 予選で失敗し、13番手スタートだったニューガーデンだが、ピットタイミングをずらす作戦が当たってトップに立っていた。彼にとってこの終盤のフルコースコーションは絶妙のタイミングで、優勝のチャンスを手に入れた。ところが、この時のピットで、彼らはソフトコンパウンドのスリックタイヤをチョイスする判断ミスを犯す。フルコースコーション中に雨が強まったため、もう一度ピットに入ってレインタイヤに交換。その作業中にもクルーがミスを犯し、今季2勝目のチャンスは消滅した。

 これでディクソンの優勝はほぼ確実と見られた。しかし、勝ったのは、最後のリスタートを6番手で迎えたシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)だった。レインタイヤで目覚ましい走りを見せたパジェノーは、次々と前車をパス。ゴールまで2周のターン8でアウトからディクソンを抜き、劇的な勝利を飾った。

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