小林可夢偉、初の表彰台。鈴鹿を埋めた10万人のエネルギーが爆発 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 一方、ザウバーが実力で速さを発揮できるサーキットでは、こうしたギャンブルは採らず、当然ながら表彰台には手が届かない。実力不足のサーキットではギャンブルに出て、これが時として当たるが、ギャンブルのチャンスを与えられるのは後方のペレスで、可夢偉はポイント獲得がやっと。可夢偉は第1戦・オーストラリアで6位、第5戦・スペインで5位、第10戦・ドイツで4位と速さを見せたが、何とも皮肉なことにこうして可夢偉とペレスの差は開いていったのだ。

 そんななかで迎えたのが、第15戦・日本GPだった。

 ザウバーC31とフェラーリエンジンには抜群の相性で、予選は可夢偉4位、ペレス6位。絶対に可夢偉に表彰台を獲らせてやりたい――。そんなチームの思いが込められたフロントウイングなど、シーズン最後の空力アップデートもこの鈴鹿に持ち込まれて効果を発揮した。

 可夢偉としては、なんとしてでもここで表彰台を獲りたかった。いや、獲らねばならなかった。

 母国グランプリといえども、「20戦のうちのひとつでしかない。いつもどおり戦う」と口では言うものの、過去2回の鈴鹿では母国ファンの期待に大きな重圧を受け、決していつもどおりのレースはできなかった。そこに表彰台への重圧も加わる。

 それでも可夢偉は「表彰台に乗って当然」と言って、自分にプレッシャーをかけていた。「まだ表彰台に乗れてないのがダサいっていうか、奇跡的なくらい不運続きやった。とにかく鈴鹿ではクルマが速い。だからあとは、普通のレースができればいいんです」と、肩の力を抜くことも忘れなかった。

 その言葉どおり、可夢偉はスタートで好発進を決め、1~2コーナーまでにレッドブルのマーク・ウェバーをかわして2位に浮上。10万3000人が詰めかけた観客席は熱狂に包まれた。

 首位セバスチャン・ベッテル(レッドブル)は速く、2位の可夢偉は3位のジェンソン・バトン(マクラーレン)との直接対決になった。その後ろには4位のフェリペ・マッサ(フェラーリ)も控えている。

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