伝統のダッチTTで今季最高のバトル。勝者マルケスはやはり一枚上手 (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 マルケスがペースを上げて逃げ始める23周目までの間には、確認できただけでも17回、トップを走る選手の入れ替わりがあった。先頭集団内の2番手や3番手の位置取りを巡る激しい駆け引きになると、100回を軽く上回っていたという報告もある。

 最初から最後まで僅差の厳しい戦いが続いただけに、さぞや選手も肉体的に疲弊したのだろうと思いきや、優勝を飾ったマルケスは、「正直なところ、肉体的には特にきついレースというわけではなかった」と、この日の戦いを振り返った。その理由は、「レース中にペースが遅いときもあったから」なのだという。

 たしかに、総レース時間を見ると、マルケスの今回の優勝タイム41分13秒863はずば抜けて速いわけではなく、過去のデータを見れば40分台の優勝タイムだった年もある。だからといって、この戦いが優勝したマルケスにとって決して楽に推移したわけではない。それは、激しいバトルが続いていた最中の戦略を振り返って述べた彼自身の以下のことばからも明らかだ。

「問題は攻撃と防御のタイミング。攻めると同時に守らないと、今度は自分が後ろから攻められる目に遭う」

「今日のようなレースだと、風が強くてラップタイムも遅く、皆のタイヤ選択もさまざまだから、それぞれがそれぞれのやりかたでレース展開をコントロールしようとしていて、そういう場合にはライダーの差がハッキリとあらわれる。どんなふうに仕掛けるのか、いつ攻めるのかはきわめて正確でなければならないし、抜きどころや守りどころも重要」

 その精緻な見極めで、マルケスはライバル勢よりも一枚上手をいくことのできる余力を残していた、ということなのだろう。

「最後はクレバーに狙い澄まして全力を振り絞って攻め、差を開くことができた。最後の最後に自分のラインを使い、プラクティスのときと同様のペースでプッシュした」

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