室屋義秀にショックの色ありあり。エアレース総合連覇に黄信号 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Joerg Mitter / Red Bull Content Pool

 だがしかし、結末はあまりに残酷なものだった。

 あたかも第3戦のリプレーを見るかのような、オーバーGによるDNF。そして、またしてもラウンド・オブ・14敗退。浮上のきっかけをつかむどころか、悪い流れにさらなる拍車をかける結果となった。

 まさかのアクシデントに、なかなか言葉が見つからない室屋。血の気を失った顔には、ショックの色がありありと浮かぶ。

「レーストラックは風が弱かったが、上空は風が吹いていて(バーティカルターンで垂直方向へ)上がった瞬間にガスト(突風)に当たったという感じ。操作自体は予選から変わっていないし、問題はなかった。あれでオーバーGになってしまうとなると、ちょっと......」

 スタート後、最初に迎えるバーティカルターンはスピードに乗った状態で入るため、「オーバーGのリスクが最も大きい」と、室屋はレース前からかなりの注意を払っていた。しかし、それは起きた。

 2戦連続でノーポイントに終わった室屋は、ポイントランキングでもふたつ順位を落とし、5位に後退。トップに立つホールとのポイント差は、実に26にまで広がった。残り4戦での逆転は極めて困難。そう認めざるを得ない。

 第4戦の結果は、マルティン・ソンカが優勝。以下、ミカ・ブラジョー、ホール、グーリアンと続いた。ソンカは今季初優勝、ブラジョーは自身初の表彰台とあって、室屋は「ふたりが(ポイントランキングで1、2位の)マットとグーリアンの上に入ってきてくれたので、まだよかった」と語っていたが、十分すぎるほどに開いたトップとのポイント差を考えれば、それが"焼け石に水"であることはよく分かっていたはずだ。

 それでも、どんなに些細なことであろうと、何かポジティブな材料を見つけなければ冷静さを保つことができない。憔悴(しょうすい)しきった室屋は、もはやそんな心境だったのかもしれない。

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