スーパーGT開幕へ。千代勝正が語る日産との「出会い、別れ、再会」 (3ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 萩庭桂太●撮影 photo by Haginiwa Keita

 さらに、第12戦・第13戦を予定していた9月の鈴鹿大会が台風の影響により2レースとも中止。これにより、千代はスポーツランドSUGOで行なわれる残り3戦で16ポイント差を逆転しなければならない状況となった。仮に千代が3連勝しても、野尻が残り3戦で下位に沈まなければ、逆転の可能性は絶たれてしまう......。

 そんな劣勢のなか、千代は第14戦でポール・トゥ・ウィンを果たし、第15戦では2位を獲得。これで野尻との差は7ポイントにまで縮まった。しかし、最終戦のスターティンググリッドは、野尻がポールポジションなのに対し、千代は絶対不利の4番手。

「逆転でチャンピオンになるためには、最終戦で僕が優勝し、野尻が4位になって、さらに僕がファステストラップを出してボーナスの1ポイントを獲得しないといけない。どう考えても(逆転は)不可能に近い状況でした。でも、ここでチャンピオンになれなかったらレースの道はあきらめると決めていたので、本当に瀬戸際でした」

 幕を開けた最終決戦――。スタートで千代は抜群のダッシュを決め、たちまちトップに浮上する。一方の野尻は3番手に下がり、2周目には4番手に後退。あとはこのまま順位を守り、千代がファステストラップを叩き出せば、奇跡の逆転チャンピオンとなる。そして6周目、千代は1分17秒527のNクラス最速ラップをマーク。そのままチェッカーフラッグを切り、逆転でシリーズチャンピオンを勝ち取った。

「本当に奇跡の大逆転でした。あのレースの後、泣きました。いろんな意味で崖っぷちでしたからね」

 翌年の2012シーズン、千代は国内トップカテゴリーのひとつ「スーパーGT」のGT300クラスで日産育成チームからデビューを果たす。1年目から並み居るライバル相手に善戦し、第4戦のSUGOでは初優勝も遂げてランキング4位を獲得。好成績でシーズンを終えることができ、来年以降も順調にステップアップするかと思われた。

 しかし、またしても千代には、「逆境」が待ち受けていた......。

(後編に続く)

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