【エアレース】「PR部長」から「勝負師」へ。室屋義秀がついに初優勝 (3ページ目)
だが、開催2回目となる今年は違った。昨年の経験も踏まえ、殺到する取材希望に対しても制限をかけ、直前の2週間はレースの準備だけに集中した。
自身のトレーニングはもちろん、タイヤと脚の部分にカバーを装着し、空気抵抗を減らすなど、他機に先んじた機体改良も進んだ。過去2戦で悩まされたオーバーG対策も、トレーニングプログラムを作るなど、二重三重に防御策を講じた。実際にすべての準備過程を直に見たわけではないが、室屋の表情を見れば、それがいかに充実したものであったかはうかがえた。
「今年はいい準備ができているので、“本当のレース”ができるって感じ」
レース前に聞いた、室屋のそんな言葉からも彼の手応えの大きさが感じられた。
何よりレース期間中の顔が昨年とは違った。昨年にも増して数多くのメディアが取材に訪れてはいたが、室屋は過剰に明るく振る舞うこともなく、どこかピリピリしたムードを漂わせていた。TVカメラに包囲されてもなお、室屋が臨戦態勢にあることが見てとれた。
もしかすると多くの取材に辟易(へきえき)し、ただイライラしていただけなのかもしれない。だとしても、それはすなわち、レースに集中したいという気持ちの表れにほかならない。
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