インディ500優勝の新人ロッシとホンダが挑んだ驚異の「燃費作戦」 (3ページ目)

  • 天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano   松本浩明●写真 photo by Hiroaki Matsumoto

 ロッシが走ることになったアンドレッティ・オートスポートは、マルチカー体制という新しい戦い方をインディカーの世界で確立したホンダ陣営のトップチーム。去年のホンダはシボレー相手に完敗を喫したが、今年はエアロキットの性能を向上させ、エンジンのパワーアップも実現してきた。

 オフの間からインディ500に向けたセッティングの研究を重ねたアンドレッティ・オートスポートは、プラクティス初日からマシンを非常に高いレベルに仕上げていた。いいマシンに乗ることができれば、クォリティの高い経験を短時間で積み重ねることができる。それが今年のロッシだった。彼は4人の経験豊富なチームメイトにも恵まれた。

 ロッシのピットで指揮を執っていたのは、チームの共同オーナーで、元インディカードライバーのブライアン・ハータ。彼はロッシが最後のリスタートを9番手で迎えた状況を見て、迷わず大ギャンブルに打って出た。

 オーバルでの超接近戦を行なってきた経験のないロッシが、9番手から優勝争いのバトルに絡み、経験豊富なライバルたちを打ち負かすシーンは想像しにくい。逆に、アクシデントでレースを終えるリスクの方が高いくらいだ。ハータは論理的に無給油作戦を選んだ。成功の可能性は小さかったが、賭けてみる価値は充分にあった。そのギャンブルの成果は、記念すべき第100回目のレースのウィナーとしての栄誉と、2億7000万円超の賞金だった。

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