新たに就任したホンダF1総責任者「長谷川祐介」とは何者か? (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki  桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ホンダがあと1年、続けていたら......。世間ではそんな疑問がいまだに問い掛けられるが、長谷川は、「それは言わないことにしています」と苦笑する。

「我々が培(つちか)ってきた技術が、ブラウンGPの勝利に貢献したのは間違いないでしょう。ですが、それがイコール、ホンダがやっていたら勝てたかというと、レースっていうのはそのときのオペレーションが重要な要素を占めていますし、いい技術があれば勝てるというものでもないと思います」

 それは、長年F1の世界で戦ってきた長谷川が痛感したことだったのだろう。

 技術がなければ勝てない。しかし、技術だけでも勝つことはできない。レースに必要なすべてが揃わなければ、勝つことはできない。

 2004年のアメリカGPで、自身が担当する佐藤琢磨が3位表彰台に上がった。F1活動を通じてもっとも印象に残っているのが、そのシーンだと長谷川は言う。では、それ以外は苦しい思い出ばかりだったのかというと、「大変だったけれど、それを嫌だと思ったことは一度もなかった」と。いつしか、長谷川はF1の魅力に取り憑かれていた。

「レースは、とにかく勝たなければ意味がない、目的がシンプルだということですね。それに加えて、F1は技術の頂点であるということ。すべての準備が整っていなければ勝つことはできないし、負けるには負けるなりの理由がある。技術をそこまで磨いていかなければ頂点を極めることはできないわけで、技術者としてはその世界で戦っていくことで自分たちの技術を磨き、自分たちの技術力を証明するということに非常に大きな価値があると思っています」

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