F1に乗れない小林可夢偉の2015年。「今、やりたいことがある」 (5ページ目)
「今までモータースポーツを盛り上げようなんて、真剣に考えたことはなかった。けど、自分がもっと一生懸命やらないと、若い子たちが今後もっと苦労するんだろうなという思いはあった。若い子たちにうまくバトンをつなげるようにしたいし、『自分さえ良かったらええわ』っていう考え方じゃダメだと思ったんです」
たしかに、F1復帰に賭け、「F1に乗れないのならレースをやめても構わないと思った」と吐露した1年前の気持ちは今も変わっていないが、同時に、自分を犠牲にしても構わないと言える強さがある。
「レースをやめるのはいつでもできるけど、力になれることはいっぱいある。やらなかったら一生後悔するやろなと思ったんです。やらずにレースをやめたりすると、それはズルい気がして。レーシングドライバーを目指す子どもの立場で考えると、今やめたら『ズルいやろ、ふざけんなよ小林可夢偉!』って突っ込まれると思うんですよね」
そんな思いを胸に挑む可夢偉の2015年は、ひとつのレースに挑むだけではなく多くの目標がある。
「サーキットがお客さんでパンクするくらいになってほしいんです。F1よりお客さんが来てくれるくらいの人気になって欲しい。そういう意気込みでやっています。いろんな部分で、まだまだのところが多いですけどね」
可夢偉はそう言って目を輝かせた。さらにひと回り成長した小林可夢偉が切り拓く「日本モータースポーツの未来」を楽しみにしたい。
(後編へ続く)
profile
Kobayashi Kamui
1986年9月13日兵庫県生まれ。
1996年にカートレースデビュー。2001年にフォーミュラ・トヨタレーシングスクールのスカラシップ生に選出され、02年ヨーロッパカート選手権に参戦。
その後、フォーミュラトヨタ、フォーミュラルノーなどを経験し、06年からF3ユーロシリーズにステップアップ。
08年からF1直下のカテゴリーであるGP2に戦いの舞台を移すと、09年にはF1第16戦ブラジルGPにトヨタのドライバーとして参戦。
いきなり9位入賞の力走を見せると、続く第17戦アブダビGPでは6位を獲得。これが評価され、10年はザウバーのレギュラードライバーとしてフル参戦。
11年、12年はザウバーで活躍。12年日本GPでは3位表彰台を獲得した。
13年はF1シートを獲得できなかったが、14年はケータハムと契約。
15年はスーパーフォーミュラ参戦が決定している。
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