【F1】可夢偉の本心。「もしかしたらこれで最後なんかなぁ」 (6ページ目)
「いやぁ、なんかね……、『もしかしたらF1でバラクラバ(ヘルメットの下に身に着ける難燃繊維)を被るのもこれで最後なんかなぁ』とかいろいろ考えて、もし自分が20歳に戻れるなら戻りたいなぁって、初めて思いましたよ。もしかしたらこれが本当に最後のレースになるかもしれないっていうのは、初めてですからね……」
ふと見れば、午前中にメカニックが触っていた右フロントサスペンションの付け根は、同じ色のペイントで塗装が施されてはいたが、ヤスリがけの跡と元々の美しい塗装との間に段差が生じ、その一部は剥がれ始めていた。それはケータハムというチームの置かれた状況、そしてマシンの技術レベルを物語っているようだった。
「もし20歳に戻れたら、もうちょっとチャンスあるかなぁって思うんですよね。もうちょっと違うキャリアの進め方ができたんじゃないかなぁって。やり残したっていう気持ちがあるし、まだ戦えると思うんやけどなぁ……」
一度でいいから彼にもっと優れたマシンでレースをさせてあげたかった、小林可夢偉の真の実力を見てみたかった。ボロボロに傷ついたケータハムのマシンを見て、言いしれない悔しさとともに、そんな思いにとらわれずにはいられなかった。
こうして可夢偉の2014年シーズンは幕を降ろした――。
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