【エアレース】今季終了。日本人パイロット・室屋義秀が奮闘 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Redbull

 ところが、である。

 極度の重圧に見舞われたアルヒはフライトに安定感がまったくなく、スタート直後からタイムが伸びない。それまでの盤石の強さがまるで嘘のように4位に終わった。

 一瞬、何が起きたか理解できないとでも言うように、声を失ったスタンド。アルヒは地元での最終戦優勝も、年間総合優勝も逃し、シーズンを終えることになった。

 この結果、最終戦の優勝はニコラス・イワノフ、年間総合優勝はラムに決まった。58歳のベテランパイロット、ラムは2005年のエアレース創設時から参戦し、今年で7年目。毎年着実に順位を上げ、世界チャンピオンの称号を初めて手にしたのである。

オーストリアで優勝したのはニコラス・イワノフ(写真中央)。2位のナイジェル・ラム(左)が年間総合優勝を決めたオーストリアで優勝したのはニコラス・イワノフ(写真中央)。2位のナイジェル・ラム(左)が年間総合優勝を決めた 熾烈な年間総合優勝争いが繰り広げられた今年のエアレースを締めくくるように、大いなる盛り上がりを見せた最終戦。会場となったレッドブル・リンクは、F1オーストリアGPも行なわれたサーキットとあって、レーストラック全体が見やすく、実に快適な観戦環境が整えられていた。

 1コーナー過ぎの直線を離陸の、ホームストレートを着陸の滑走路に使用するという粋な演出も、観戦に訪れたファンは大いに楽しめたはずだ。さすがはモータースポーツの本場だと、うならされた。

 と同時に、目の前を小型飛行機が軽快に飛び回る迫力を味わえるとともに、タイムを競うという単純さで誰の目にも分かりやすいエアレースは、理屈抜きで楽しめるイベントであることを再認識させられた。

 この盛り上がりを、いつか日本でも味わえないものだろうか。そう思わずにはいられない2日間だった。

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