【F1】崩壊寸前のチームで奮闘。可夢偉は鈴鹿で走るのか? (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 そのシンガポールGP決勝での可夢偉のマシントラブルと同様、現在のチーム状況を象徴する出来事があった。

 決勝前夜の24時半、シンガポールには珍しい雨が降り続くなか、ケータハムのホスピタリティユニットには現場の全スタッフが集まっていた。輪の中央にチーム代表マンフレディ・ラベットが立ち、一方的に喋り続ける彼の言葉に耳を傾けるスタッフたちの表情は、真剣なようにも深刻なようにも見えた。

会合には、ケータハムのスタッフ全員が集まった会合には、ケータハムのスタッフ全員が集まった 50分にも及んだその会合にはエンジニアやメカニックからケータリングスタッフまでが作業の手を止めて参加していたが、ドライバーやその関係者はすべて部屋の外に出されていた。

 即時撤退というような事態ではないにせよ、7月のチーム売却以降に数十人のスタッフを解雇し、ドライバーにさらなる持参金の持ち込みを要求するなど、チームの財政事情が容易ならざる状態であることは想像に難くない。こうした状況についての説明が行なわれたものと思われる。

 ラベットは「スタッフたちとの意思疎通を図るための定例のミーティングで、7月に経営陣が変わってから毎月行なっていることだ」と言うが、スタッフには厳しい箝口令(かんこうれい)が敷かれた。実際、「勇気づけられるスピーチだった」とメディアに語ろうとする広報スタッフを別のスタッフが制止して引っ張っていくこともあるなど、尋常ではない雰囲気が漂っていた。

 シンガポールGPの決勝レース直前、スターティンググリッドでは可夢偉のマシンを担当するメカニックやエンジニアたちが自然発生的にマシンの周りに集まり、可夢偉もその輪に呼び入れられて記念撮影が行なわれた。

 いつ最後のレースになってもおかしくない、彼らにそんな思いがあるのかもしれない。ケータハムは最下位から抜け出せず、レースよりも目の前の資金集めに奔走している。可夢偉と同じくレースが好きでレースをしたくてこの世界で戦っている彼らの胸中を思うと、やりきれない思いに駆られる。

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