【F1】売却が噂されるケータハムで、可夢偉が語った本音 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 タイヤの摩耗レートをもとにピレリが各チームに通達していたソフトタイヤの最大周回限度は「45周」だった。しかし可夢偉は14周目にこのタイヤに換えてから2周遅れでチェッカーフラッグを受ける69周目までを走ろうというのだから55周になる。かなり強引な戦略だった。

「ソフトタイヤで50周以上走ったら、最後はもう話にならへんような状態でしたよ。2ストップやったらもうちょっと戦えていたと思います。(15位の)ビアンキの前に行けてたと思いますよ」

 16位で完走した可夢偉はやや苛立ちを交えて言った。レース後、可夢偉はこの戦略変更の決断を下した戦略担当エンジニアに詰め寄ったというが、それは良いことのようにも感じられた。レース後、いつも以上に綿密な計算によって自分たちの戦略が検証されることだろう。もし夢も希望もないのであれば、ただ漫然と305kmを走りチェッカーを受けるだけのこと。だが希望を抱いているからこそ、可夢偉は怒りをぶつけ、さらに前へ進もうとする。

「経営に関しては、上の人たちが頑張ってることは間違いないから、僕がどうこう言うことはできないでしょ? 僕がアルバイトしてお金持っていっても限られてるし(苦笑)。チームが経済的に安定したときに結果を出せるようにしておくこと。僕にはそれしかできないですからね」

 この先どんな未来が待っているのか、それは誰にも分からない。しかし、前に進もうとする思いがなければ明るい未来を手に入れることはできないだろう。それがどんな道のりであったとしても、きっと可夢偉は独自の感性と思いの強さで突き進んで行ってくれる。そう信じて、見守っていきたい。

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