2014.07.04

【F1】売却が噂されるケータハムで、可夢偉が語った本音

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 オーストリア中部の山間部にある小さな街ツェルトベクを見下ろすように、山の中腹一帯がサーキットになっていた。2003年以来のグランプリ開催となるレッドブルリンクは、小林可夢偉にとって初めて訪れる地だった。

 いつものように木曜の朝早くにサーキットに到着し、午前9時からチームメンバーたちとともにコース1周をゆっくりと歩き始める。コース図を見ただけでは山のアップダウンは分からない。

「コース幅が狭いし、1コーナー、2コーナーが思いのほかタイトでしたね。あと、サーキットの周りにレストランも何もないなっていう(苦笑)」

いまだ入賞なしと苦しい戦いが続く小林可夢偉 ケータハムのシミュレーターにはこのサーキットのデータは入っておらず、可夢偉は事前の準備もほとんどなしにここへやって来ていた。もちろん、その程度のことがさして有利・不利につながらないのがF1ドライバーの資質というものなのだが、普通のサーキットなら2、3周も走ればすぐに勘所がつかめるという可夢偉でも、このサーキットはそう簡単ではないだろうと感じ取っていた。

「10周くらいはかかると思いますよ。ここはアップダウンがあるからどこの角度を使うかっていうのが問題で、その感覚を掴むまでに普通よりも時間がかかると思いますね」

 コーナーが実質的に7つしかなく、1周は4kmちょっとで、時間にして70秒程度と短い。そのほとんどが直線を低速コーナーでつないだレイアウトだ。しかしセクター2の途中から山を下っていくセクションは中高速コーナーが連続し、繊細なマシンコントロールが要求される。

 可夢偉はそれを独自の感覚で表現する。

「こういうサーキットって、水を流し込むような感じなんです。攻めて曲がろうとするとダメで、投げ込もうとするようなイメージでいかなあかんのです。ブレーキングを遅らせ過ぎてもダメやし、早過ぎてもダメやし、ブレーキを踏みすぎてもあかんし、頑張るんじゃなくて”置き”に行く感じですよ。開けてる口にマシュマロをポン、ポン、ポンって流れ作業で投げ入れる感じ(笑)」

 そう言いながら、可夢偉は両手で下から上へとボールを投げる動作をしてみせる。