【F1】没後20年。中嶋悟が語る「セナの速さの秘密」 (2ページ目)

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi photo by Murakami Shogo

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 よく「レーサーは反射神経がよいので速く走れるんじゃないですか」と言われますが、そうじゃないんです。反射神経は僕もセナもそんなに変わりませんし、F1のレースではパッと目の前の状況を見て、それに反応するのではとても間に合いません。

ロータス時代の87年GPでのセナ。翌年、マクラーレン・ホンダに移籍 photo by Getty Imagesロータス時代の87年GPでのセナ。翌年、マクラーレン・ホンダに移籍 photo by Getty Images たとえば、F1ドライバーはモナコGPが開催される市街地コースのトンネルを280キロ以上のスピードで駆け抜けていきます。トンネルを抜けてパッと視界が明るくなり、次のコーナーの入り口が見えます。でもコーナーが見えたあとに反応しても遅いんです。コンマ数秒で壁にゴンッとぶつかって終わりです。見えてから反応するのではなく、レーシングカーの運転では自分で時間をつくっていくんです。

 モナコのような市街地コースでは、コーナーの先がまったく見えません。見えないけれども、次に起こることを予想して仕掛けていくのです。「コーナーの先は見えないけれども、クルマがこういう動きをしているので、このままで走って行けばカーブをうまくクリアして、壁の10センチ横を通ることができる」とかね。そうやって実際に目に見える前に反応して時間をつくっていくことで、タイムを削り取ることができるのです。

 とはいえ、モナコはでひとつのコーナーをクリアしても、次から次へとコーナーが連続していきます。僕からすれば四六時中綱渡りしているようなものでした(笑)。だから何度も言いますが、セナの目にはよっぽど周りがのんびり見えていたんじゃないかと思うのです。

 きっと他のスポーツでも、セナのようにスーパースターと言われる人たちは、同じような感覚を持ち合わせているのだと想像します。視野が広く、他の選手には見えないものが見えている。さらに言えば、目だけじゃなく、頭の回転や記憶力などもうまくリンクさせながら機能しているのだと思います。

 たとえばサッカーでゴール前にセンタリングを上げる時に、自分のところに来たボールのどの部分を、どれぐらいの量のスピンをかけて蹴れば、味方にとって理想的なパスになるのか。おそらくスーパースターと言われる人たちは、ディフェンダーと味方の動きを全部見ながら、そのベストの答えを瞬時に判断して、プレーすることができるんだと思います。

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