2014.05.04

川井一仁が語る「アイルトン・セナ、20年前のあの日……」

  • 川喜田研●インタビュー・構成 interview by Kawakita Ken

5月特集 F1 セナから20年後の世界
川井一仁が語るセナpart1

 サンマリノGP決勝レースの事故で、アイルトン・セナがこの世を去った1994年から20年。当時を知るドライバー、ジャーナリストらに、F1への思い、セナへの思いを語ってもらう第2弾は、セナがF1デビューした当初から現場で取材を続け、長年F1中継のピットレポーターを務めるF1ジャーナリスト川井一仁氏。

 あの日、イモラの現場で何が起きたのか? そして、アイルトン・セナとは何だったのか?「川井ちゃん」が見た、カリスマの素顔とは――。

1984年にF1デビューを飾ったアイルトン・セナ photo by Studio M.m/AFLO 最近、セナの没後20年ということで、いろいろな人から取材を受ける。だけど、不思議なことに、あの日の記憶はすごく「断片的」なんだ......。もちろん、あの日に限らず、20年も経てば、忘れてしまったことは多いのだと思うが、それだけじゃない。それはあの時「セナが死んだ」というショックと無縁じゃない気がする。

 今でも思い出すのは、あの年のイモラが妙に暖かかったということ。サーキットの横には川が流れていて、暖かな春の日の光が川面にキラキラと反射して、空にはタンポポの綿毛がフワフワと飛び交っていた......。「ああ、何だか桃源郷みたいな景色だな」と思った記憶がある。

 ところが、あの年のサンマリノGPは最初からイヤな感じの週末だった。まず、金曜日の予選でルーベンス・バリチェロの大事故があった......。ただ、酷いクラッシュの割にはルーベンスにケガはなかったし、その時はまだ、普通のアクシデントだと思っていた。ところが、土曜日の予選で今度はローランド・ラッツェンバーガーの死亡事故が起きて......。雰囲気は最悪になった。

 何しろF1での死亡事故は、ジル・ヴィルヌーヴとリカルド・パレッティが亡くなった1982年以来、12年ぶりだった。しかも、セナはあの時、バリチェロの事故とラッツェンバーガーの事故のどちらも、自分で事故現場を見に行ったんだ。とくにラッツェンバーガーのアクシデントは悲惨な状況だったから、当然、セナも平常心ではいられなかったと思う。