2014.01.26

昏睡1カ月。ミハエル・シューマッハの「奇跡」を再び

  • 川喜田研●文 text by Kawakita Ken photo by Getty Images

 昨年12月29日に元F1世界チャンピオンのミハエル・シューマッハがフランスでスキー中に転倒。頭部の外傷で意識不明の重体に陥ってから、早いもので1カ月が経とうしている......。

シューマッハが入院している病院前には多くのファンが集まった 現在、脳の損傷を抑えるため人工的な昏睡状態と低体温状態に置かれているシューマッハの容体は、とりあえず生命の危機を脱したと言われているが、今後、意識が戻るという保証はなく、また、仮に意識が戻ったとしても重篤な後遺症を抱える可能性もあるため、依然として予断を許さない状況が続いているようだ。

 偉大なチャンピオンを襲った突然の悲劇はF1関係者やファンのみならず、多くの人に衝撃を与えた。日本を含め、世界各国の主要メディアもシューマッハの事故を連日トップニュースとして報道。彼の存在の大きさを再認識した人も多いのではないだろうか。

「ミハエル・シューマッハは最も偉大なF1ドライバーか?」と問われれば、議論の分かれるところはあるかもしれない。だが、世界チャンピオン7回、通算91勝、予選ポールポジション69回、ファステストラップ77回、通算獲得ポイント1566点(いずれもF1歴代1位)という圧倒的な記録を前にすれば、彼が「史上最強のF1ドライバー」であることに疑いの余地はない。

 多くの偉大なチャンピオンたちがそうであるように、彼もまた、強靭な肉体と天賦の才能に恵まれていた。勝利に対する貪欲なまでのこだわりや驚異的な集中力、強烈なリーダーシップと求心力――。そして何より、すべての物事に対するたゆまぬ努力によって、シューマッハはかつて誰も手が届かなかった領域に到達したドライバーだった。

 その意味で、彼が残した数々の記録は、勝利のために自らの100%を捧げ続けてきた圧倒的な情熱の「軌跡」であり、彼の人生そのものの投影図と言ってもいい。決して裕福ではなかった家庭に生まれ、14歳で本格的にレーシングカートに乗り始めて以来、彼は常にコース上でライバルを打ち負かし、ただひたすら勝利を重ねる事によって自らの人生を切り拓いてきた。