F1バーレーンGPで日本人エンジニアが悔やんだタイヤの選択 (2ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「金曜日のデータから、これでいけるだろうという自信はありました。タイヤのアロケーション(割り当て)から事前に想定はしていましたが、金曜日に走ってみてそのデータを見て決めました。エイドリアン(・スーティル)も1周目のパンクがなければポールと同じように2ストップで走れていたはずです」

 そう振り返るのは、フォースインディアでタイヤ分析を担う松崎淳エンジニア(タイヤ&ビークルサイエンス部門シニアエンジニア)。ブリヂストンで長くF1活動のチーフエンジニアを務めてきた人物だ。

 多くのチームが苦悩しているグレイニング(ゴム表面のささくれ)の対応で、フォースインディアがライバルたちを一歩リードしている状況を、松崎はこう語る。

「その点に関しては他のチームより少し進んでいる気がしますね。もしダウンフォースの量がトップチームと同じくらいになれば、ウチはもっとうまく、長くタイヤを使えると思います」

 マシンの純粋なポテンシャルとしては、まだ4強には及ばない。今季、フォースインディアが2台とも予選Q3に進むことができたのは、今回のバーレーンGPが初めてだった。しかし、決勝では常に入賞圏内に食い込んでくる。それはまさに、タイヤに優しいマシン作りが成功しているからにほかならない。

 松崎とチームは、昨シーズン後半戦の多くを「タイヤの理解」のために過ごしてきた。

 昨年9月に行なわれたマニクールでの若手ドライバーテストで、松崎はタイヤの使い方に関して手応えをつかんだ。そして、それ以降はマシン開発を進めるよりも、あえてマシンを変えずに実証データの蓄積に専念してきた。その集大成が昨シーズン最終戦ブラジルGPの上位快走(ヒュルケンベルグの5位)であり、今季型マシンVJM06なのだ。

「去年のマニクールでかなり良いテストができ、そこからタイヤの理解が深まって、今年のマシンに反映できたんです。おかげで調整が非常にやりやすくなった」

 そして現在、イギリスにあるフォースインディアのファクトリーでは、新たな開発が急ピッチで進められている。

 松崎は明言こそしないが、今季の隠れたトレンドとなっている「サスペンションの姿勢制御システム」の開発であることは間違いなさそうだ。それが投入されれば「予選の速さも増し、上位グリッドから決勝に臨むことで表彰台のチャンスはさらに大きくなる」と松崎は言う。

「予選のペースは随分変わると思います。現在、ロングランは良いので、予選の速さを上げるための努力が必要です。常に今回くらいのグリッドポジション(7位と8位)からスタートできるようにしないと、上の方で何かがあった時に表彰台に上がるチャンスをつかめませんからね。このクルマはまだまだ速くなりますよ」

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