【F1】小林可夢偉が振り返る序盤戦。「速いのにポイントが獲れていない」 (2ページ目)
「あんまり一発のタイムは見ずに、(燃料を積んで)重い時のタイヤの保ちを見てるんです。ウイリアムズみたいな、予選は遅いけどレースになったらそこそこ走っちゃうっていうのは腹が立つじゃないですか(苦笑)。とりあえずロングランでタイヤが保つようにしたら、結構ポイントが獲れるんじゃないかなと思います」
そのためにセッティングの変更を重ねていく中で、可夢偉とザウバーは方向性を見失ってしまった。マシンは「こんなにバランスが悪い状態で走るのは久しぶりやなっていうくらい」の状態になってしまい、可夢偉は苦戦を強いられた。
あれだけのスピードで走りながらも、20以上のボタンやノブが並ぶステアリングホイール(ハンドル)の中で、可夢偉はふたつのノブをコーナーごとに操作してドライビングするという離れ業をやってのけていた。
リアタイヤの動きを制御するデフ(ディファレンシャル)と呼ばれる装置の効き方をコーナーごとに調整することで、マシンバランスの悪さをなんとか打ち消そうとしていたのだ。コーナーの入口ではこう、コーナリング中はこう、といった具合に、ひとつのコーナーに対してそれぞれを直感的に、ターンインする直前に決めて操作していたのだ。
結果的に、予選の最後のアタック時に操作ミスを犯してしまい、Q3に進むことはできなかった。しかし57周の決勝でも可夢偉は常にその操作を続けていた。
「走りながらステアリングにあるノブを操作するんです。エントリー(コーナーの入口)とミッド(コーナーの中)があるんで、次のコーナーまでにそのふたつをカチカチっと操作して。DRSもKERS※(の操作)もあるから、ホントに大変ですよ! コーナーとコーナーの間にはそんなに時間もないからね。1秒、2秒の間にガガガッって、そんなん無理やわ(苦笑)」
※DRS(Drag Reduction System/ドラッグ抑制システム=可変リアウイング)
※KERS(Kinetic Energy-Recovery System/運動エネルギー回生システム)
と言いながらも、可夢偉は自分がその離れ業を編み出し、実際にやり遂げたことに満足げな表情を見せていた。
結局レースはノーポイント(13位)で終えることになってしまったが、コーナーの少ないバーレーンのサーキットでは、そもそもマシンポテンシャルが不十分だった。
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