オークスは「1強」ステレンボッシュで本当にテッパン? 逆襲を目論む素質馬2頭が不気味 (3ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo

 もう1頭、「打倒ステレンボッシュ」の候補として気になる素質馬がいる。チェルヴィニア(牝3歳)である。

 同馬も桜花賞では4番人気という支持を得ながら、13着と馬群に沈んだ。だが、敗因ははっきりしている。厩舎関係者によれば、「乗り込み不足で仕上がっていなかった」とのこと。この中間で、どこまで上積みできるかはわからないが、全体的にパンとすれば、大舞台で通用する能力は秘めている。先述の専門紙記者が言う。

「この馬は2歳夏の未勝利戦(8月12日/新潟・芝1800m)を、ほぼ馬なりで1分46秒9という破格の時計で勝っています。その時計自体、2歳馬が夏の段階で出せる時計ではないし、それを馬なりでマークしたというのがすごい。あのとき、とんでもない馬が出てきたと思いました」

 さらに、続く出世レースのGIIIアルテミスS(10月28日/東京・芝1600m)も難なく勝利。牝馬クラシックの最有力候補に躍り出た。

 しかしその後、阪神JFを前にして脚部不安で戦線離脱。前走の桜花賞でやっと復帰を果たし、しかも惨敗を喫したことを思えば、なかなか手を出しづらいかもしれないが、もとはこの世代を代表する逸材だ。専門紙記者が続ける。

「ルメールさんが、この馬を手放さないんですよ。他の有力馬に乗る選択肢もあったはずなのに、(オークスでも)迷うことなく、この馬を選択しました。それはなぜか? その理由に頭を巡らせば、なんとも不気味です」

 チェルヴィニアの母は、2016年のオークス2着馬チェッキーノ。その血統背景からして、東京・芝2400mの舞台は合う。なおかつ、管理するのは木村哲也厩舎。同厩舎とルメール騎手とのコンビと言えば、世界一になったイクイノックスがすぐに思い浮かぶ。こうしたプロフィールを鑑みれば、ますます不気味な存在だ。

 はたして、「1強」ステレンボッシュがオークスでも再び強さを見せるのか。あるいは、桜花賞では能力を出しきれなかった素質馬が巻き返しを図るのか。過酷な舞台で繰り広げられる、若き乙女たちの"死闘"に注目したい。

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