NHKマイルC、史上初めて実現した「2歳王者vs2歳女王」――勝つのはどっちだ? (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo

 では、この2歳王者と2歳女王、どちらが強いのか。関西の競馬専門紙記者はこう語る。

「能力的にはほとんど差はなく、五分だと思います。ただ、NHKマイルCという舞台でのプラスアルファを考慮すれば、アスコリピチェーノがやや有利かな、という感じがします」

 ひとまず、同記者の見立てはあとに回して、先にNHKマイルCにおける牡牝の比較を見てみたい。

 これまで過去28回のレースにおいて、牝馬は5勝。その数は牡馬より完全に劣っているものの、そもそも出走頭数は牡馬のほうが圧倒的に多いことを踏まえれば、それほどの差は感じない。少なくとも、牝馬がまったく歯が立たないレースではないように思える。

 過去10年を振り返ってみても、牝馬が2勝。2着は5回もある。アエロリットが勝った2017年は、牝馬がワンツーフィニッシュを決めている。

 こうした結果を見ると近年ではますます、牝馬が牡馬相手に互角以上に戦えるレースになっている、と言えるかもしれない。依然として、牡馬の出走頭数のほうが断然多いことを思えば、なおさらである。いずれにせよ、NHKマイルCでは"牡馬と牝馬の差"はそこまで考える必要はないだろう。

 そうしたことを踏まえたうえで、両馬の比較である。

 先述の専門紙記者が言うアスコリピチェーノの"プラスアルファ"というのは、ひとつは舞台が東京競馬場であること。アスコリピチェーノは関東馬ゆえ、"ホーム"で戦える利があるということだ。

 桜花賞では"慣れない"栗東滞在での調整だったが、今回は"住み慣れた"美浦でレースに向けての態勢を整えている。長距離輸送もなく、これまでよりも負担が軽くなるのは、大きなアドバンテージと言える。

 対するジャンタルマンタルは、関西馬。そのため、皐月賞のあと、一度戻った関西からレースに合わせて再び、関東までの長距離輸送をしなければならない。短期間で2度の輸送、しかも中2週でのレースということを考えると、かなりの負担となる。

 もうひとつは、ともに前走の右回りから左回りのコースに替わることだ。

 アスコリピチェーノは、左回りの東京と新潟で1回ずつ走って、いずれも強烈な末脚を繰り出して完勝。右回りで能力が削がれるということはないが、左回りのほうがより高いパフォーマンスを発揮できそうだ。

 一方、ジャンタルマンタルは左回りの経験が一度。GIII共同通信杯(2月11日/東京・芝1800m)で2着という成績を残している。同レースで勝ったのが、のちに皐月賞を制するジャスティンミラノだから、決して評価を下げることはなく、「左回りがよくない」ということもない。

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