菊花賞はハーツクライ産駒と「父仔3代制覇」を狙うディープインパクト系に注目 (2ページ目)

  • 平出貴昭●文 text by Hiraide Takaaki
  • photo by 伊藤 康夫/アフロ

 しかし、ハーツクライ産駒はなぜか菊花賞には縁がなく、これまで16頭が出走し、2011年ウインバリアシオンの2着が1回あるだけ。残りはすべて6着以下という成績だ。産駒には3000m以上の重賞ウイナーも多数出していて、長距離が不得意というわけではないため、巡り合わせの悪さもあったのだろう。今年は英セントレジャー馬を出した勢いもあるので、狙ってみたい。

 今回は2頭のハーツクライ産駒が出走するが、筆者が本命に推すのはハーツコンチェルト(牡3歳、美浦・武井亮厩舎)だ。

 同馬はまだ1勝馬だが、昨年9月の新馬戦(中京・芝2000m)を8馬身差で圧勝した後、GⅢ東京スポーツ杯2歳S(東京・芝1800m)で3着、GⅡ青葉賞(東京・芝2400m)で2着、GⅠ日本ダービーで3着と、重賞戦線で結果を残してきた。前走のGⅡ神戸新聞杯は1番人気に推されながら5着に敗れたが、スローペースの中で外々を回り、勝ち馬から0秒1差まで追い上げた内容は悲観するべきものではない。長い脚を使えるタイプで、距離が延びるのは歓迎材料だろう。

 ハーツクライ産駒というだけではなく、血統的にも強調点は多い。母の父アンブライドルズソングは、2014年の勝ち馬トーホウジャッカル(父スペシャルウィーク)、2020年の勝ち馬コントレイル(父ディープインパクト)と同じで、父がサンデーサイレンス系というのも共通する。

 さらに、父ハーツクライ、母の父アンブライドルズソングという配合はGⅠジャパンC(東京・芝2400m)、GⅠ大阪杯(阪神・芝2000m)を勝ったスワーヴリチャード、地方交流GⅠジャパンダートダービー(大井・ダート2000m)を勝ったノットゥルノと同じというニックス配合でもある。皐月賞馬とダービー馬の対決が注目されている中、ハーツコンチェルトは前走の着順もあって注目度が下がっているため、気楽な競馬ができるのもプラスに働きそうだ。

 もう1頭はサトノグランツ(牡3歳、栗東・友道康夫厩舎)を推す。父サトノダイヤモンドは2016年の、その父ディープインパクトは2005年の菊花賞勝ち馬であり、前述のように、ディープインパクトは5頭の菊花賞馬を出すスーパーサイヤーだ。勝てば日本のクラシック史上初の「父仔3代制覇」となる。父サトノダイヤモンドもGⅡ神戸新聞杯を勝って菊花賞に臨んでおり、同じローテーションで快挙に挑む。

 以上、今年の菊花賞は、ハーツクライ産駒ハーツコンチェルト、サトノダイヤモンド産駒サトノグランツの2頭に期待する。

プロフィール

  • 平出 貴昭

    平出 貴昭 (ひらいで・たかあき)

    主に血統分野を得意とする競馬ライター、編集者。(株)サラブレッド血統センター在籍。著書に『覚えておきたい日本の牝系100』『一から始める! サラブレッド血統入門』など。「週刊競馬ブック」で『血統見聞録』を連載するほか、「競馬四季報」などの編集業務にも携わる。そのほか、『優駿』などにも寄稿。twitterアカウント:@tpchiraide

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