宝塚記念は5歳牝馬の2頭が推し 2200mのスペシャリスト、レースと縁深い「格下馬」に注目 (2ページ目)

  • 平出貴昭●文 text by Hiraide Takaaki
  • photo by Sankei Visual

 ジェラルディーナの血統を見てみよう。母はジャパンC連覇を含むGⅠ7勝、「牝馬三冠」を成し遂げた名牝・ジェンティルドンナ。父はGⅠ天皇賞・秋、GⅠ香港Cなど日本と香港でGⅠを6勝した名馬モーリスだ。

 モーリスは1600~2000mを得意とするタイプだったが、その父スクリーンヒーローは芝2400mのジャパンCの勝ち馬。さらにその父のグラスワンダーは、1999年の宝塚記念でスペシャルウィークに3馬身差という圧倒的な差をつけて優勝した名馬だ。ジェラルディーナの2200mでの強さは、グラスワンダーから受け継いだものかもしれない。

 共通点が多いリスグラシューは、この宝塚記念からGⅠ3連勝で年度代表馬にまで上り詰めたが、ジェラルディーナにも同じような走りに期待する。

 もう1頭はスルーセブンシーズ(牝5歳、美浦・尾関知人厩舎)を推す。前走のGⅢ中山牝馬S(中山・芝1800m)で重賞初制覇を飾ったばかりの"格下馬"で、GⅠはオークス(東京・2400m)9着、秋華賞(阪神・芝2000m)11着と冴えないが、血統は魅力的だ。

 父ドリームジャーニーは2009年の宝塚記念の勝ち馬で、有馬記念も勝つなど5歳時にピークを迎えた馬。その全弟オルフェーヴルも、クラシック三冠のほか、宝塚記念でも勝利している。

 父の父ステイゴールドの産駒は、上記2頭のほかにゴールドシップ(2勝)、ナカヤマフェスタも宝塚記念で勝利しており、合計5勝。さらに母の父クロフネは、2020、21年と連覇したクロノジェネシスの母の父と、血統表全体が宝塚記念と縁深いものになっている。

 スルーセブンシーズは、今秋のGⅠ凱旋門賞に登録済み。GⅢ1勝でGⅠ勝ちのない馬が凱旋門賞に遠征するのは異例ともいえるが、すでにステップレースのGⅠ愛チャンピオンSにも登録を済ませており、本気度はかなりのものだ。陣営はここにきての大きな成長を感じているのだろう。

 鞍上はドリームジャーニーやオルフェーヴルの主戦だった池添謙一騎手。同じドリームジャーニー産駒のヴェルトライゼンデとのコンビでは6戦して勝利できなかったこともあり、今回にかける意気込みは並々ならぬものがあるだろう。

 以上、今年の宝塚記念は、ジェラルディーナ、スルーセブンシーズの5歳牝馬2頭に注目だ。

プロフィール

  • 平出 貴昭

    平出 貴昭 (ひらいで・たかあき)

    主に血統分野を得意とする競馬ライター、編集者。(株)サラブレッド血統センター在籍。著書に『覚えておきたい日本の牝系100』『一から始める! サラブレッド血統入門』など。「週刊競馬ブック」で『血統見聞録』を連載するほか、「競馬四季報」などの編集業務にも携わる。そのほか、『優駿』などにも寄稿。twitterアカウント:@tpchiraide

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