ウマ娘でも強い逃げ馬のセイウンスカイ。菊花賞で見せた策士ぶりを振り返る (2ページ目)

  • 土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu
  • photo by Kyodo News

 そうして迎えた菊花賞も、古馬GI級の実績馬を相手に完封したのにも関わらず、2番人気。1番人気は秋初戦の京都新聞杯でマッチレース状態からキングヘイローをねじ伏せたダービー馬スペシャルウィークで、単勝オッズは1.5倍と圧倒的な支持を集めていた。

 菊花賞での逃げ切り勝ちは、1959年のハククラマ以来出ておらず、逃げ戦法はむしろタブーとされていた。しかし、セイウンスカイは躊躇なく先頭を奪うと、京都大賞典ほどの大逃げは打たないまでも、後続に差をとってマイペースに飛ばしていく......。が、それがまさに作戦であった。

 菊花賞の3000mのうち、前半1000mは59秒6とやや速めのラップを刻んだが、中盤の1000mは64秒3とガクンとペースを落としているのだ。ここで十分に息を貯めたセイウンスカイは、後半の1000mに入ると後続をみるみるうちに引き離していく。そのラップは12秒3、11秒9、11秒6、11秒5と、どんどん加速していくもので、後続からすれば、追いかけても差が詰められない状態だった。

 セーフティリードたっぷりに直線を迎えたセイウンスカイは最後まで影を踏ませることなく、意地で2着に追い上げたスペシャルウィークに3馬身半差をつける圧勝、しかも当時の世界レコードタイムも叩き出すおまけつきだった。ゲーム版の育成ウマ娘で、非常に強力な固有スキル「アングリング×スキーミング」として実装されているのは、まさしく、この時に見せた、単騎逃げからの後半再加速だ。

 もちろん誰にでもできることではなく、後続を翻弄できる"策士"ぶりは、セイウンスカイ自身に非凡な能力があったからこそ。菊花賞の前後半1000mのラップは59秒6-59秒3。その片鱗はジュニアCで見せた精密機械のようなラップを思い出させた。

 昨年の菊花賞を制したタイトルホルダーは、そのセイウンスカイ以来の逃げ切り勝ち。その後の活躍からも、やはり非凡な能力を秘めていたからこそだとわかる。

 今年も三冠目でどんな能力を開花させる馬が出てくるのか。楽しみは尽きない。

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