スプリンターズS、新たな短距離女王候補メイケイエールは本当にひと皮むけたのか (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Sankei Visual

「セントウルSでは馬体重が14kgも増加していたのに、まったく太め感がなかった。馬体全体が大きくなって、大人びてきました。馬自体、すごくよくなっているという印象で、『成長している』とも感じました。

 実際にレースでは、文句をつけようがない、強い勝ち方を見せてくれました。ただ、それでもまだ、以前のようにかかることが絶対にないか? と聞かれれば、『ない』と言いきることはできないと思っています」

 そして同記者は、セントウルSの結果、内容ともに「評価しすぎではないか」と見ている。理由はこうだ。

 第一に、「セントウルSはGIIながら、メンバーレベルがさほど高いレースではなかった」と言う。

 まさしく、先行して2着に粘ったファストフォース(牡6歳)はこの夏、小倉の芝短距離重賞(GIII)を2戦こなして、いずれもふた桁着順に沈んでいる。さらに他の馬も、同馬と似たような実績の馬ばかりで、格はGIIでも、とてもレベルの高いレースとは言えなかった。

 GI安田記念の覇者ソングラインも参戦していたが、同馬にとっては初のスプリント戦。しかも、セントウルSはあくまでの叩き台で、先を見据えての仕上げだった。

 続いて、専門紙記者は「レースの流れ、展開にも恵まれた」と指摘する。

 メンバーレベルが低い重賞では、出走馬のスピードに差があるため、馬群がバラけがちになる。事実、セントウルSでは逃げ・先行勢の馬群に隙間ができて、メイケイエールは他馬に気を遣うことなく、前の馬を追走できた。こうしてレース前半をラクに乗りきれたことが、快勝への一因となった。

 要するに、セントウルSのメイケイエールは、メンバーにも、レースの流れにも恵まれた。勝って当然のレースだった、というわけだ。

 勝ち時計がコースレコードとなったことも、開幕週の時計が出やすい馬場だったことを考えれば、さほど驚くことではない。ゆえに専門紙記者は、秋初戦を快勝しただけで「過大評価はできない」と語る。

 また、専門紙記者は、本番となるGIスプリンターズS(10月2日/中山・芝1200m)に向けて、前哨戦で上手くいきすぎたことが「メイケイエールにとっては、かえって不安」だと言う。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る