末脚自慢が集った皐月賞。前哨戦で完璧な予行演習をこなした逃げ馬から漂う大駆けムード (2ページ目)

  • 大西直宏●解説 analysis by Onishi Naohiro
  • photo by Sankei Visual

 イクイノックスは新馬、GII東京スポーツ杯2歳S(11月20日/東京・芝1800m)と連勝。馬体のつくり、フットワーク、操縦性とどれもすばらしく、2戦の内容には文句のつけようがありません。

 新馬戦では、のちの「2歳女王」サークルオブライフに7馬身差をつけ、東スポ杯2歳Sでは、2歳馬としては出色の上がり32秒9という時計をマーク。追えば追うだけ伸びる走りを見て、今年のダービー馬になる姿を想像した人も多いのではないでしょうか。

 となれば、最有力候補にも挙げられる1頭ですが、懸念されるのは東スポ杯2歳Sからのぶっつけという、過去にもあまり例がないローテーション。頭を悩ます材料となるのは、そこです。

 しかし、陣営は年明けすぐに「皐月賞へ直行」というローテを公表。つまり、ぶっつけ参戦は予定どおりということ。体調が整わずレースを使えなかったのではなく、最初からのプランどおりとなれば、僕はそこまで心配しなくていいと思っています。

 皐月賞の3年前の勝ち馬サートゥルナーリア、2年前のレースを制したコントレイルも、2歳戦からの直行ローテで戴冠を遂げました。"休み明けの馬を走らせる技術"は、昔と比べて格段に向上。イクイノックスも勝ち負けを演じてもおかしくありません。

 一方、GIII共同通信杯(2月13日/東京・芝1800m)の覇者であるダノンベルーガは、先週の時点でようやく皐月賞参戦を正式表明しました。この、1週前までは使うかどうか未定だった、という点が悩みどころとなります。

 聞くところによれば、右回りだとフォームを崩す面が見られるため、ここまで参戦には慎重な姿勢を示していたようです。それでも、追い切りに騎乗した川田将雅騎手が確認をとって、問題がなかったとのことで正式にゴーサインとなりました。

 そうなると、一度トライアルを経験してほしかったという思いもありますが、共同通信杯で見せた強烈な末脚からして、ポテンシャルが高いのは間違いありません。何にしても、好結果を出すには、右回りの中山コースを克服できるかどうかがポイントになるでしょう。

 これら有力各馬をはじめ、どの馬が勝つにしても、皐月賞がGI日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)へとつながる、最重要レースであることは確か。"ダービーの最大の前哨戦"という目線も持って、じっくりとこの一戦を観察したいと思っています。

 人気上位馬には末脚に自信がある馬が多いことを考えれば、紛れがあるとすれば、やはり"前"で流れに乗れる馬でしょう。僕が乗ったサニーブライアンもそうでしたが、皐月賞では人気薄馬の逃げ切り、あるいは、番手からのなだれ込み、というのが結構見られます。

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