ウオッカが制したダービーの1番人気は?無冠に終わった「大物」たち (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 トゥザワールドも、名牝トゥザヴィクトリーを母に持つ良血で、デビュー前から評判が高かった。そして実際、2戦目の未勝利戦から弥生賞まで4連勝を飾って、一躍クラシックの主役候補となった。

 しかし、1番人気の皐月賞は2着と惜敗。続くダービーも5着に終わった。この時のダービーを勝ったのは、ワンアンドオンリー。弥生賞で2着に負かし、皐月賞でも先着していながら、肝心の大舞台で負けた。

 クラシックを勝つための、あと一歩の詰め、ここで"勝つ"という本気度が、トゥザワールドには足りなかった。菊花賞でも16着に敗れ、「この馬はこんなものか」と思われるようになった。

 ところが、続く古馬相手の有馬記念でジェンティルドンナの2着となって、波乱を起こした。この"走る気"を、もっと早く出していたら......。

 少し時間を遡(さかのぼ)れば、三冠に縁がなかった馬として、1996年のクラシックを戦ったロイヤルタッチを思い出す。

 この年は、種牡馬2年目のサンデーサイレンスの評価を、早くも決定的にした年。「当たり年」とも言われ、クラシック戦線においても「大物」と称された産駒がふんだんにいた。イシノサンデー、ダンスインザダーク、バブルガムフェローらがそうで、ロイヤルタッチもそうした「大物」の1頭に数えられていた。

 現にデビューから3連勝を飾って、直近の若葉Sでは2着に敗れるも、皐月賞では堂々の1番人気に推された。しかし皮肉にも、同じサンデーサイレンス産駒に苦杯をなめる。イシノサンデーの2着に終わった。

 続くダービーも4着に終わると、菊花賞では再び、同じサンデーサイレンス産駒のダンスインザダークの後塵を拝して2着となった。自らを強くしたのは、まさしくサンデーサイレンスの血である。だが、その血が大きな"壁"にもなった。生まれた年が悪かった、というしかない。

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