ディープ産駒初の牡馬二冠馬誕生か。ダービーに挑むコントレイルの勝算 (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 ところが、皐月賞のレース前、コントレイルはパドックでも、返し馬でも、妙に落ち着いていた。陣営は当初、それは「いいことだ」と思っていたが、レースがスタートした瞬間、それは「間違いだ」と気づいた。

 よくよく考えてみれば、コントレイルの落ち着きは、いわゆる「スイッチが入っていない」状態に過ぎなかった。つまり、皐月賞ではコントレイルの気持ちが戦闘モードに入る前に、ゲートが開き、レースが始まってしまったのだ。

 それでも、コントレイルはそうした"誤算"などなかったかのように、圧巻の競馬で勝利した。見る側からすれば、新たな強みを見せつけられて、ダービーへの期待が一段と膨らんだ。

 ただし、「陣営としては、『勝ったからいい』では済まされなかった」。そう語るのは、関西の競馬専門紙記者である。

「普通にスタートを切っても、前に行こうとしないことがある――それは、デビュー4戦目にして、コントレイルが初めて見せた、新しい一面でした。そして、『もしかするとこれが、次のダービーでは敗因になっていたかもしれない』と、陣営は捉えたわけです。なにしろ、ダービーが最大目標ですからね」

「でも......」と言って、専門紙記者はこう続けた。

「その最も重要な舞台を前にして、コントレイルを矯正すべき、新たな点が見つかった。そのことを、陣営は『よかった』と言ったわけです」

 競馬界最高峰の舞台となる日本ダービー。その大一番を前にして、課題が見つかったことは、コントレイル陣営にとって、このうえない"収穫"だったと言える。

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