デアリングタクト、格安牝馬の逆襲。騎手との信頼関係で無敗の二冠達成 (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 オープン特別のエルフィンS(2月8日/京都・芝1600m)でレースレコードをマーク。ウオッカ以来となる1分33秒台で駆け抜けたスピードと、泥んこの桜花賞で唯一大外から強襲。他馬とは次元の違う豪脚で差し切ったパワーは、この世代では明らかに抜けていた。

 そんなデアリングタクトのケタ違いの能力に、最も大きな信頼を寄せていたのが、デビュー時からコンビを組む、松山弘平騎手である。

 発汗して、少しイレ込んでいるように見えたレース前のことも、「落ち着いていました」と意に介さない。もともと気性の激しさが残る馬。主戦騎手としては、あの程度のことは「想定内」だったのだろう。

 他の馬に進路を狭められた最初のコーナーにおいても、デアリングタクトの力を信じる松山騎手の好判断が光った。

 現在、高速馬場にある東京コースは、圧倒的な先行有利な状況にある。後方一気や、大外をブン回しての競馬では勝ち切れない。その点を考慮すれば、多少の不利があったとしても、あえて引かず、スタート後に保持した前目の位置を主張するのも手だったかもしない。

 しかし松山騎手は、無理をしないで位置を下げた。

「少し後ろになったとしても、位置取りにはこだわらず、脚をタメることに専念しようと思った」

 それこそ、「最後は必ず脚を使う」というデアリングタクトに対する、松山騎手の絶対的な信頼の証だ。

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