名手ぞろいのキーンランドC。晩夏を彩るベテランの一撃に期待大
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
「夏競馬のGI」ともいえる札幌記念が終わり、第100回という記念大会だった甲子園の幕も閉じて、いよいよ夏の終わりを迎えようとしています。
そして今週の札幌競馬場では、日本のトップジョッキーと世界選抜の名騎手が一堂に介し、ハイレベルな熱戦によって夏の終わりを彩る『ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)』が行なわれます。
前身となるワールドスーパージョッキーズシリーズ(WSJS)同様、世界のトップジョッキーたちが魅せる巧みな騎乗技術とせめぎ合いは、とても見応えがあります。競馬は走る馬が主役ではありますが、走らせているのは人間だ、ということを強く思い知らされるイベントでもあります。これは、馬券を検討する際にも、重要なファクターとなるでしょう。
その札幌で行なわれる今週の重賞は、GIIIキーンランドC(8月26日/芝1200m)。WASJが開催されているだけあって、トップジョッキーが勢ぞろいしています。ここは、そのジョッキーを中心に考えてみても面白いと思います。
まずは、なんといってもジョアン・モレイラ騎手。現在は短期免許を取得して日本で騎乗していますが、来日するたびにその手腕には驚かされています。
モレイラ騎手が今回手綱を取るのはナックビーナス(牝5歳)です。
ナックビーナスは昨年の3着馬で、以降もダート戦に臨んだ地方交流重賞の東京盃(9着。大井・ダート1200m)を除けば、重賞でも安定した走りを見せてきました。今春のGI高松宮記念(3月25日/中京・芝1200m)でも3着と好走。現在のスプリント戦線でトップ争いを担っている1頭といえます。
ただ、大きく崩れることはないものの、昨年のレース以降に出走した芝レースの7戦中、勝ったのはオープン特別の1戦のみ。勝ち味に遅いイメージがありますね。
そんな馬の鞍上を務めるのが、モレイラ騎手。当然、注目でしょう。
今やすっかりお馴染みの姿になりましたが、「マジックマン」の異名を持つモレイラ騎手は、そのマジックのような手綱さばきで、日本でも数多くの鮮やかな勝利を魅せてくれています。
以前にもお話しましたが、どんな馬に乗っても、鞍はまりが抜群。また、柔らかい手首を巧みに使って馬をコントロールしている、その技術は特筆モノです。生まれ持ったセンスなのでしょうか、どんな馬でも(勝ち負けに)持ってきてしまう雰囲気を感じます。
はたして今回、勝ち味に遅いイメージのナックビーナスにはどんな"マジック"を使うのか、本当に楽しみです。
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著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。