「善戦マン」返上。サウンズオブアースが天皇賞・春で一変するぞ (2ページ目)

 強敵は、シュヴァルグラン(牡4歳)。この馬もまた、昨夏から大きな成長を遂げた1頭です。

 シュヴァルグランは昨春の京都新聞杯(8着。2015年5月9日/京都・芝2200m)のあと、無理せず早々に休養に入りました。夏の終わりの札幌までじっくりと休んで、そこで成長を促してきました。それが、今の飛躍につながっていると思います。

 8月末の札幌で復帰したあとは、コンスタントに結果を出して、復帰2戦目から3連勝を飾ってオープン入り。年明け初戦の日経新春杯(1月17日/京都・芝2400m)で2着と好走すると、前走の阪神大賞典(3月20日/阪神・芝3000m)では圧巻の競馬を披露しました。2着に2馬身半差をつける完勝で、本格化を感じさせるレースぶりでしたね。

 とにかく操作性の高い馬で、仕掛けると即反応し、シュッとした脚を繰り出せるところが最大の魅力です。やはり長距離戦では、そうした操作性、馬と人とのコミュニケーションの高さが重要な要素となります。

 その点、シュヴァルグランは安心して乗れる馬。鞍上の福永祐一騎手も、かなりの手応えを感じているのではないでしょうか。

 この他、昨年の菊花賞馬キタサンブラック(牡4歳)、一昨年の菊花賞馬トーホウジャッカル(牡5歳)、そして昨年のレースで勝ったゴールドシップを際どく追い詰めた2着のフェイムゲーム(牡6歳)など、長距離戦で実績のある馬が多数参戦。ここ数年の中では、レベルの高いメンバーが顔をそろえて、本当に面白いレースとなりました。

天皇賞・春で初のGI制覇を狙うサウンズオブアース天皇賞・春で初のGI制覇を狙うサウンズオブアース そんな激戦の中、今回の「ヒモ穴馬」には、サウンズオブアース(牡5歳)を取り上げたいと思います。

 前走の日経賞では、斤量58kgのゴールドアクターに対して、サウンズオブアースは斤量56kgで臨みましたが、ゴールドアクターに4分の3馬身差をつけられて2着と敗戦。2kgの斤量差がありながら、完敗とも思える内容で、おそらく多くの方々が「両者の勝負づけは済んだ」と思ったことでしょう。

 いかにも、あのレースを見れば誰もがそう思うでしょうが、サウンズオブアースはもともと2着が多い馬。悪く言えば勝ち切れない、よく言えばどんなメンバーでも相手なりに惜しいところまで来る存在です。突き抜けるだけの決め手がないのは確かですが、先頭に立ちたくないという気性があるのかもしれません。

 ともあれ、そうしたことはちょっとしたきっかけでガラッと変わることがあります。その可能性を感じることが、今回ふたつあります。

 ひとつは、久しぶりに藤岡佑介騎手が手綱を取ることです。乗り手が替わることで、何かしらの変化を誘発することがよくあります。

 もうひとつは、厩務員さんの存在です。前走の日経賞では、有馬記念のときとは違う方がパドックで馬を引いていました。おそらく担当者が替わったのだと思いますが、それでいてあれだけの走りが見せられたのは、今の厩務員さんとの相性も悪くないのでしょう。

 厩務員さんは、馬にとって最も近い存在です。それが替わることは、騎手が替わること以上に大きな影響を及ぼすと思います。今回は、厩務員さんが替わって2戦目。サウンズオブアースにさらなる変化があってもおかしくありません。レースが楽しみです。

大西直宏オフィシャルブログ>

著者プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る