注目の京成杯。人気落ちナムラシングンが「あッ」と言わせる
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
2016年の中央競馬が開幕しました。
この業界は、年末年始はとにかく慌しくて、特に年明けの正月競馬のときは、1年で最もせわしない状況になっています。もし雪が降ったりしたら、なおさらです。それだけに、馬の調整はとても難しく、3日間の変則開催(1月9日~11日)となった今年の正月競馬を見ても、太めが残っている馬が結構いましたね。
今週からは、しばらく通常の開催日程となって、業界全体が徐々に落ち着きを取り戻していきます。ただし、先週が月曜日までの変則開催だったので、今週末までは難しい調整が強いられるでしょうね。
そうした状況の中、1月17日には、京都でハンデ戦のGII日経新春杯(芝2400m)が、中山では3歳戦のGIII京成杯(芝2000m)が行なわれます。少頭数のわりには粒ぞろいのメンバーが集結した日経新春杯も興味深い一戦ですが、ここでは、牡馬クラシック第1弾の皐月賞(4月17日)と同じ舞台で行なわれる京成杯に注目したいと思います。
その京成杯の舞台であり、皐月賞が行なわれる中山・芝2000mというのは、牡馬三冠の中で最もトリッキーで、最も勝つのが難しいコースと言えます。そんなコースだからこそ、皐月賞の前に「同コースを経験させておきたい」と思う陣営は多いでしょう。
本番のトライアル戦となる弥生賞(3月6日)だけでなく、この京成杯や、年末に行なわれたホープフルS(2015年12月27日)にも、関西馬の出走が多いのは、そういった理由からだと思います。
とはいえ、京成杯で好走したからといって、皐月賞での好走につながるわけではありません。近年は、特にそうした傾向にあります。それがまた、競馬の難しいところですね。
さて、今年の京成杯。まず注目したいのは、同じ中山・芝2000mで行なわれた前走・葉牡丹賞(2015年12月5日)で、鮮やかな勝利を飾ったメートルダール(牡3歳)です。
もともと2走前の未勝利戦(2015年10月12日/東京・芝1800m)での勝ち方がよく、「この馬は走ってきそうだな」と思っていました。ただ、少し器用さに欠けるので、葉牡丹賞ではトリッキーなコースへの対応がどうかと思っていましたが、見事な勝ちっぷりを披露してくれました。
確かに4コーナーでも大外に回して、決して器用な競馬をしていたわけではありませんが、直線大外を後方から豪快に差し切り勝ち。負かした相手は1勝馬クラスとはいえ、好メンバーがそろっていましたから、その勝ち方には本当に驚かされました。鞍上の戸崎圭太騎手には、それだけの自信があったのでしょうね。
今回はさらにメンバーが強くなるため、葉牡丹賞のような最後方からの競馬ではさすがに届かないでしょう。しかし、もう一列前で競馬をするだけで、十分に結果は出せると思います。課題はありますが、その脚力に期待したいですね。
1 / 2
プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。