【競馬】安田記念もデムーロ。混戦なほど際立つ「騎手の手腕」

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

「競馬の祭典」日本ダービーも終わり、東京競馬場におけるGI5週連続開催は、安田記念(6月7日/東京・芝1600m)を残すのみとなりました。

 一昨年はロードカナロア、昨年はジャスタウェイと、確固たる中心馬がいましたが、今年はそこまで抜けた存在がいません。GIウイナーが何頭か出走するとはいえ、それらを脅(おびや)かす既成勢力、いわゆるもう少しでGIに手が届きそうな面々も力をつけてきていますし、さらに勢いのある上がり馬()も台頭してきています。多くの馬にチャンスがあって、非常に難解なレースとなりました。
※あがりうま。下級条件から連勝を飾るなどして急速に力をつけてきた馬。

 そんな中、まず注目しなくてはいけないのは、"上がり馬"のモーリス(牡4歳)でしょう。管理するのは、日本ダービーをドゥラメンテ(牡3歳)で制した堀宣行厩舎。同厩舎に移った3走前から、モーリスの素質が開花しました。

 転厩初戦となる若潮賞(1月25日/中山・芝1600m)では、とんでもない脚力を見せて快勝。続くスピカS(3月7日/中山・芝1800m)でも、4コーナーでは最後方にいながら、直線に入って大外から豪快に差し切り勝ちを収めました。多少折り合いを欠きながらも、条件クラス(1600万下)ではモノが違いましたね。

 そして、今後の試金石と見られた前走のGIIIダービー卿チャレンジトロフィー(4月5日/中山・芝1600m)も強烈でした。道中のペースが条件クラスよりも速くなるため、ほとんど折り合いを欠くことがなく、最後の直線ではまたも大外を強襲。3馬身半も突き抜ける圧勝劇を披露しました。まさに本格化を思わせるレースぶりでしたね。

 相手は、確かにGIII級のメンバーだったかもしれませんが、そうであっても余りある内容でした。勝ち時計(1分32秒2)も優秀で、抜け出してからも遊ぶことなく、どこまでも伸びて行きそうな末脚には目を見張るものがありました。まだまだ奥がありそうで、さらなる成長力を感じます。

 今回は、一段とメンバーが強くなって、斤量58kgを背負うのも初めてです。しかしモーリスは、メンバーが強くなったほうがより能力を発揮しやすいタイプだと思います。斤量にしても、馬体重500kg前後と、馬格があるので心配はいらないでしょう。堀厩舎の2週連続GI制覇という可能性は、十分にあると思います。

 初GI、初重賞制覇を狙う既成勢力組にも、気になる存在がいます。昨秋のマイルCS(2014年11月23日/京都・芝1600m)で惜しくもハナ差2着だったフィエロ(牡6歳)です。鞍上が戸崎圭太騎手ということで、なおさら興味をそそられます。

 というのも、戸崎騎手は前述したモーリスの前2走に騎乗して勝利を収めているからです。もちろんフィエロに騎乗するのは、モーリスと比べて選んだわけではなく、(例年、4歳馬は賞金が足りずに除外になることが多いので)フィエロが先約だったと思いますが、誰よりもモーリスのことをよく知っている、という点が大きな強みとなります。

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著者プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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