【競馬】安田記念もデムーロ。混戦なほど際立つ「騎手の手腕」 (2ページ目)
そうなると、戸崎騎手はおそらく、レースの中心になると思われるモーリスの位置を把握しつつ、その決め脚を意識しながら、勝てる位置を取りにいくのではないでしょうか。戸崎騎手はそれができるジョッキーでもあり、余計に軽視することはできませんね。
混戦の場合、鞍上の一瞬の判断で明暗を分けることが多々あります。ゆえに、そういうレースでは、ジョッキーの手腕を普段よりも重視して、馬券検討の材料に加えてもいいと思います。昨年の全国リーディングジョッキーで、今年も関東リーディングのトップ(6月5日現在)を走る戸崎騎手なら、期待に応えてくれるのではないでしょうか。
ジョッキーと言えば、ドゥラメンテで2度目のダービー制覇を果たしたミルコ・デムーロ騎手も忘れてはいけません。そこで、今回の「ヒモ穴馬」には、彼が手綱をとるダイワマッジョーレ(牡6歳)を取り上げたいと思います。
ダービーを制したばかりのM・デムーロ騎手が手綱をとるダイワマッジョーレ(右)。 M・デムーロ騎手が同馬に初めて跨(またが)ったのは、3走前の阪急杯(3月1日/阪神・芝1400m)でした。同レースでは、大外から猛追して差し切り勝ち。ある程度好位につけて競馬をしていたこの馬のイメージを、一新する内容でした。
次走の高松宮記念(3月29日/中京・芝1200m)では、スタートで出負けして、またも最後方からの競馬となりました。1200m戦では、その出遅れはさすがに致命的でしたね。最後の直線ではよく追い込んできましたが、6着止まりでした。
そして、前走の京王杯SC(5月16日/東京・芝1400m)でも、再びスタートで出負け。高松宮記念ほどではなかったものの、道中後方の競馬を余儀なくされました。結果、直線に入ってから内を突いて伸びてきましたが、残り2ハロン(400m)で行き場を失って後退。そこから再度伸びたものの、10着と大敗を喫しました。
それでも今回、見直せると思うのは、トップとコンマ3秒差の僅差だったこと。加えて、上がりも33秒3の脚を使っていて、一瞬の不利がなければ、もっと際どい勝負になっていたと思うからです。
また、直線の不利によって、溜(た)めが利いたことは、マイル戦となる今回に向けては、いい収穫になったと思います。おそらく、鞍上のM・デムーロ騎手も、そんな手応えを感じているのではないでしょうか。M・デムーロ騎手の2週連続GI制覇も、十分に考えられますね。
プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。
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