2014.05.25

【競馬】ブリランテのダービー制覇を予感させた「牧場の奇跡」

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 写真提供:パカパカファーム

『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第35回

クラシック一冠目となる皐月賞で3着と好走したものの、再びかかり癖を見せたディープブリランテ。その分、距離延長への不安は一層増すことになったが、同馬の関係者は1カ月後の日本ダービーに向かうことを即決した。競走馬にとっては最高の、一生に一度のひのき舞台。少しでもチャンスがあれば、同舞台に挑むのは必然だ。はたして決戦の日を迎えるまでの間、生産者であるパカパカファームのスタッフたちは、どんな思いで過ごしていたのだろうか――。

春のクラシックシーズンは、繁殖とセリ市の準備で大忙しのパカパカファーム。 4月15日に行なわれた2012年の皐月賞(中山・芝2000m)。二冠目の日本ダービー(東京・芝2400m)は、それから約1カ月半後の5月27日に予定されていた。

 パカパカファームのフォーリングマネージャー(生産担当)を務める伊藤貴弘氏は、皐月賞が終わると、再び多忙な日々を過ごしていたという。

「4~5月は、まだまだ繁殖牝馬の出産シーズン。そのため、毎日夜間勤務で出産に備えていました。1年の中でも特に大変な時期なんですけど、ディープブリランテの動向については、ずっと気になっていましたね。ダービーに向かうことになって、逆転への期待もしていたのですが、かかり癖のことや、距離延長がどう影響するのかなど、皐月賞の前とは比べ物にならないくらい、不安や心配事ばかりが頭の中でよぎっていました」

 皐月賞で見せたかかり癖を考えると、日本ダービーでの距離延長を肯定的に捉えるのは難しい。その不安は伊藤氏の中で日に日に大きくなっていったが、一方で、ディープブリランテのすごさを改めて痛感することにもつながったという。

「本当なら、ダービーに出られるだけでも素晴らしいことですし、うれしいことなんです。でも、ブリランテはそういう喜びを通り越して、心配できるところにいる。それは、競走馬に関わる人間として、すごく幸せなことなんだと思いましたね」