【競馬】秋華賞、トリッキーなコースで波乱を演出する穴馬とは?
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
秋のGIシリーズが本格的に始まります。10月13日には、3歳牝馬三冠の最終戦となる秋華賞(京都・芝2000m)が開催されます。
この秋華賞、牝馬三冠の中でもとりわけ難解なレースです。というのも、阪神外回りの芝1600mで行なわれる桜花賞と、東京・芝2400mで行なわれるオークスは、比較的有利不利の少ないコース設定で、馬の実力や能力どおりの結果が出やすいのですが、秋華賞が行なわれる京都内回りの芝2000mというのは、とてもトリッキーなコースで、圧倒的な人気馬の取りこぼしが意外に多いんです。
同コースは、まずスタートしてから1コーナー入口までの距離がそれほど長くありません。そのため、ポジション取りが熾烈になりやすく、テンからペースが速くなることがしばしばあります。フルゲート18頭立てのGIレースとなれば、なおさらです。そして、328mという最後の短い直線が最大のポイント。阪神外回り(桜花賞が行なわれるBコースは476.3m)や東京(525.9m)に比べてかなり短いため、早仕掛けになりやすいんですね。さらに、直線に入る前には、3コーナーから4コーナーに向けて急坂を下っていきます。結果、勢いがつきやすくなって、4コーナーでは皆、外へ膨らんでしまいます。そんなふうに、レースの行方を左右する要所が多く、ジョッキー目線で見ても、非常に乗りにくいコースです。
そうしたコース形態やレースの特徴を加味して、人気を背負う馬は、3~4コーナーにかけて、どうしても外側を進出したくなります。内をつくとゴチャついて不利を受けることが想定され、直線が短いコースではそのロスが致命傷になるからです。すると当然のことながら、他頭数の競馬で外を回る分、人気馬は相当なロスを背負うことになります。そこで、もし博打(ばくち)を打つような騎乗で、内から仕掛けていく能力差のない有力馬がいたりすると、人気馬は出し抜けを食らうことになります。
過去には、あのウオッカ(3着/2007年)も、そんな競馬で負けました。出来うんぬんもあったのでしょうが、1着ダイワスカーレットに敗れたのはまだしも、2着レインダンスを捕らえ切れなかったのは、秋華賞というレースの特徴ならではのものでしょう。一昨年の1番人気ホエールキャプチャ(3着)も外目を回って、内をついた1着アヴェンチュラ、2着キョウワジャンヌには届きませんでした。
ならば、人気を背負っても内で我慢すればいいのでしょうが、ブエナビスタ(3着。※2位入線降着/2009年)のような例があります。4コーナー付近の内側で包まれて仕掛けが遅れて、勝ったレッドディザイアにハナ差及びませんでした。また、単勝1.7倍という断然の人気を背負ったダンスインザムード(2004年)は、すべての不利を回避するために早めに仕掛けていきました。しかし、同馬自身で息の入らない展開を作ってしまい、差し馬の流れになって4着と沈みました。
どの馬も、その後の活躍を考えれば、負けたことが不思議でなりませんが、そうした波乱が起こってしまうほど、トリッキーなコースなんです。牝馬三冠レースの中で、勝ちを意識して乗るのが最も難しいコースと言えるのではないでしょうか。
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著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。